広島のある観光客向けの施設を運営する社長が、インタビューで次のように答えていました。
Q.入場料が高いという声もありますが。
A.私たちは地場の中小企業で、補助金などではなく自分たちで運営しているので、その辺りも考慮に入れてくださればと思います。
(原文そのままではなく趣旨のみ)
これを見てあなたはどう思ったでしょうか。
「そうか、ならしょうがないな」と思ったでしょうか。
私は率直なところ、
「入場料に見合う施設だったらそのような批判はされないわけで、運営が中小企業とかは利用者には関係ないはず。理由になっていないのでは?」
と感じました。
たとえばあなたが初めて行ったレストランで「店主は修行の経験が少ないため、高くてまずくても許して下さい」と貼り紙がしてあったら、「じゃあしょうがないな」となるでしょうか?
おそらくそんなことはないでしょう。イチ消費者である私たちはそのお店が安いか、おいしいかが選択の基準であり、店主の事情は関係ないからです。
冒頭の観光施設は「我々は中小企業なので高くても許して下さい」と貼り紙を出せるでしょうか?おそらく出せないでしょう。ということは、それは利用者に共感はされないだろう、と本音ではわかっているはずです。
私たちはつい無意識に「(こちらの事情で)こうなのは仕方ない、許容してください」と顧客に押し付けていることがあります。
例えば私は昔、創業したころ、よく「ご経験は?」「実績は?」と聞かれるので、内心では「始めたばかりなんだから経験も実績も無いに決まっているだろ!」と思っていました。しかし、質問する側からしたら、経験も実績もない人は信用できない、と思うのは当然のことです。相手の立場で考えたら「そう思うのもしょうがないよな、じゃあどうしよう」と前向きに考えられるようになりました。
あなたも無意識の「ウチは○○なんだからしょうがない、許容してくれ」を押し付けていないでしょうか?
共感されない押し付けは相手も納得してくれません。
※認知症の人が働く「注文をまちがえる料理店」や、「このコンビニは耳が不自由な人も働いています」なども、店側の都合を押し付けているじゃないか!と思われたかもしれません。ここで大事なのは「共感」で、「そうか、それならOK」と共感できるかどうかです。カラダが不自由で大変なことは共感できても、観光施設が「中小企業だから高くて許して」と言うのは共感できない人が多いのではないでしょうか。
代表・幸本陽平 プロフィール
- 化粧品デパートのマーケティング業務に携わり、その後独立。
研修や執筆、マーケティングをわかりやすく伝えるための活動などに取り組む。
(株)東風社代表取締役 中小企業診断士 一橋大学卒
広島市在住、新潟県長岡市出身
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