事業戦略の基本と実践[2] (全3回)

「事業戦略の基本と実践」、全3回の第2回です。
事業戦略の立案や実行に携わる方は、ぜひお役立てください。

第1回はこちら

企業が継続的に成長し、変化の激しい市場で生き残るためには、「戦略」が不可欠です。
この「戦略」という単語はよく目にするものの、抽象的でとらえどころがなく、実務にどう落とし込めばよいのか分からない、という方も多いのではないでしょうか。

本コラムでは、事業戦略とは何かを整理し、どのように考え、構築していくべきかを実務の視点から解説します。
特に管理職やマネジメント層にとって、戦略的な思考は実務を遂行するうえでの重要な力となるので、ぜひお役立てください。

環境分析で終わりにしない

戦略を考えるうえで、「環境分析」は重要です。
自社の強みや市場の状況、競合の動きなどを丁寧に把握することで、戦略立案の根拠になります。

しかし、ここでよくあるのが「分析したけれど、それをどう戦略に結びつければいいか分からない」となってしまうことです。
つまり、環境分析が「やって、知って、それで終わり」になってしまうのです。

戦略は能動的に「構想」する必要があります。
分析結果をただ報告書にまとめるだけでは、価値は生まれません。
様々な情報をもとにして「どうしたいのか」「何を選び、何を捨てるのか」を決定し、それを構想に昇華させていく必要があります。

以下ではさらに、戦略を構想する際に持っておくべき視点や、よく使われるフレームワーク、そしてそれらをどのように意思決定に活かすかを整理します。

SWOT分析、しただけではNG

SWOT分析は、あなたもご存知かもしれません。
自社の強み(Strength)、弱み(Weakness)、外部環境における機会(Opportunities)と脅威(Threats)を整理することで、自社の立ち位置を把握する手法です。

SWOT分析でよく見られるのは、強みの定義が不十分であることです。
「丁寧な対応」「品質の高さ」「長年の実績」など、主観的な良さを「強み」とみなしていないでしょうか。
強みは「他社にはない」「模倣が難しい」など、客観的な事実を中心に考えましょう。

なおかつそれが「顧客にとって意味があり、それを選ぶ要因になる」ことでなければなりません。
単に「他社と違う・新しい」だけでは強みにはならないので気をつけましょう。

また、SWOT分析をする際は、クロスSWOT、たとえば「強み×機会」でどんな施策があり得るか、まで落とし込んで考えるとよいでしょう。
単なるSWOT各項目の羅列で終わらせては意味がありません。

フレームワークは作り方より使い方

4P(Product, Price, Place, Promotion)や5Force(業界の競争構造分析)、3C(Customer, Competitor, Company)など、戦略立案で活用されるフレームワークは数多くあります。
これらは考えるための枠組みにすぎず、答えを出してくれるツールではありません。

「4Pで整理しました」「PESTで外部環境を洗い出しました」と、フレームワークを使ったこと自体に満足してしまっていないでしょうか。
重要なのは、そのフレームワークをどう使い、どのような結論を導くかです。
会議資料のページ数を増やすだけのフレームワークでは意味がありません。

ポーターの3つの競争戦略

マイケル・ポーターによって提唱された「コスト・リーダーシップ戦略」「差別化戦略」「集中戦略」の3つの競争戦略は、企業戦略論の定番といえます。(詳細は割愛します)

しかしこの理論は、誕生からすでに40年以上が経過しています。
現代のビジネス環境においては、単一の戦略だけでは対応しきれないことも増えてきました。
たとえばニトリは、低価格なのでコスト・リーダーシップ戦略のように思えますが、単に安さだけではなく、機能などにおいて「差別化」もしています。

このように、多くの企業は「コスト」と「差別化」の両立を目指すなど、いわゆる「ハイブリッド戦略」を取ることが多くなっています。
そのため、ポーターの分類に当てはめることが難しい場合もあります。

このように、フレームワークはあくまで「思考の補助」として使いながらも、現実の戦略構想はより柔軟に組み立てる必要があります。

顧客ニーズは重要?

「顧客のニーズに応えることが大切だ」
「市場のニーズをきちんと把握しなければならない」
このように言われますが、本当でしょうか。

「顧客に聞いても、心の奥の本音は分からない」ことに注意しなければなりません。
たとえば、某ファストフード店のアンケートで「もっと健康的なメニューを増やしてほしい」という意見が多くてニーズに応えたが、実際の購入行動ではがっつりしたハンバーガーが選ばれる、といったことがよくあります。

顧客の声をそのまま鵜呑みにして商品開発を行っても、売れるとは限りません。
「顧客ニーズが大切」は一般論としてはそうなのですが、顧客自身が「自分の欲しいもの」をわかっていないのも事実なのです。

重要なのは、顧客の「インサイト」、言語化されていないニーズや不満を探ることです。
それをうまく汲み取り、商品やサービスに落とし込むことができると、ヒット商品につながります。

戦略構想で問われるのは「意志」

ここまで見てきたように、事業戦略とは、情報やフレームワークを単に並べることではありません。
「この事業はどこを目指し、何を選び、何を選ばないのか」を決定し、行動することです。

意思決定は、責任を伴う行為です。
「この道を行く」と決めることで、組織全体の方向性が揃い、行動が一致します。
そのため、緻密なロジックや行動計画も大切ですが、
ミッション・ビジョン・バリューに立ち返り、「私たちはこれを成し遂げるんだ」と旗を振り、同じ方向に向かうことが大切です。

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