【価値交換フロー】011 ワークマンのマーケティングを解説

価値交換フローは、顧客にとっての価値とその価値を交換する仕組みを整えることで、次に取るべき行動を明確にする実行型フレームワークです。 自社のマーケティングのどこが不十分なのか、お客様が買わない原因はどこにあるのかを的確に突き止められるため、「マーケティング実務の普遍的な基盤」として、新規事業の立ち上げや、既存商品の立て直し、施策の優先順位付けなど、規模や業種を問わずさまざまな場面で活用いただけます。
価値交換フローの詳細はこちら https://www.tofusha.co.jp/vex/
ワークマンのマーケティング戦略とは?
「価値交換フロー」を用いて、企業のマーケティング戦略を解説します。
今回は「ワークマン」を取り上げます。
(私のような)一定の年齢の方は、一昔前のワークマンといえば、
「暮らしわくわく ワークマン♪」
でおなじみの、吉幾三が出演するテレビCM……をイメージされるのではないでしょうか。
ワークマンは、かつては「職人のための作業服店」というイメージでした。
それが今では、幅広い一般消費者にも「高品質・低価格」の商品、というイメージが届いています。
ワークマンは
・自社の「価値」を徹底的に分析し
・それを新しい市場へ適切に「交換」した
といえます。
ここを見誤ると、ワークマンの躍進は「流行りに乗った」「低価格志向をとらえた」など、表面的な理解にとどまってしまうので、注意しましょう。
では、ワークマンのマーケティングを価値交換フローで解説します。
1.「価値」を適切にとらえ、お客様にとっての「自分ごと」にする
マーケティングにおいて重要なのは、お客様がその商品を「自分にとって良いものだ」と思えるかどうか(自分ごと化)です。
かつてのワークマンは、職人さんという特定の「属性」に向けた「作業服」という価値を提供していました。
ワークマンの商品が持つ「防水」「防寒」「滑りにくい」といった機能は、実は他の場面や属性の方にも「価値」があるものでした。
例えば、バイクやキャンプの愛好家、雨の日に自転車で子供を送り迎えする保護者、を想像してみてください。
そのような方たちは、
・高価なアウトドアブランド品は、機能が高く自分にもぴったりだとは思うけど、そうそう手が出せない。
・かといって、いわゆる「職人の作業服」の店に行くのは少しハードルが高いし、どうせダサい商品しかないはずだ。
…と考えているのではないでしょうか。
そこでワークマンは、自社が持つ価値を「過酷な環境で働く職人のための機能」から「日常の不便を解決する機能」へととらえ直しました。
そして、バイク、キャンプ、雨の日の送迎……など、顧客が自分ごととしてとらえられる「場面」を大きく広げました。
2.「他より良い」を支える独自のベネフィット
ただし、価値=「自分にとって良さそうだ」だけでは商品は売れません。
そこに差異、「他より良さそうだ」もしくは「これしかない」といった要素がないと、売れません。
先ほどのバイク、キャンプ、雨の日の送迎……といった「場面」のお客様が、何らかのアウトドアウェアの購入を検討するとします。
その比較検討の段階において、ワークマンは「独自ベネフィット」をわかりやすく提供しています。
多くのアウトドアブランドがファッション性やブランドイメージ、あるいは機能性を競いあっています。
その中で、ワークマンは「プロ品質の機能×作業服価格」という独自の立ち位置を徹底しました。
「この価格で、この防水性能は他にはない」という圧倒的な優位性
=「差異ベネフィット」
を提供します。それによって、お客様の頭の中での比較で「だったらワークマンかな」と選ばれ、指名買いされるのです。
3.「交換」の場を最適化した流通(店舗)戦略
いくら価値があり、差異を感じられても、それが適切に手に入らなければ(交換できなければ)、売上には繋がりません。
ワークマンは、商品の「流通」にも取り組みました。
「WORKMAN Plus(ワークマン・プラス)」という、一般の顧客が入りやすい明るい店舗をショッピングモールなどに出店しました。
これにより、「作業服の店は入りにくい」という心理的な障壁を解消しました。
誰でも気軽に機能性を体験し、購入できる「交換の場」をつくったのです。
ワークマン×価値交換フロー まとめ
ワークマンの事例を、価値交換フローで振り返ってまとめます。
・誰に、どのような価値を届けるか。その価値は、どのような場面や属性のお客様に感じてもらえるか
=作業服の高機能性は、職人だけでなく、アウトドアのレジャーが好きな人にも価値になる
・それをどうやって円滑に手に入れてもらうか(商品交換の最適化)
=ショッピングモール等に、明るく入りやすい店を作る
これら2つの要素がうまくかみ合っています。
もしも価値交換フローのような適切なマーケティングを行わないと、
「広告を増やそう」
「もっと値下げしよう」
「これからはネット通販強化だ」
といった、「価値」や「交換」を無視した「なんとなく良さそうな取り組み」に走ってしまいがちです。
●お客様にとっての価値とは?
●それをどうやって適切に交換するか?
を構築するのがマーケティング=価値交換フローです。
【以下、補足です】
ワークマンを、価値交換フローでさらに分析します。
価値の「嗜好」
……ファッション性・流行を重視する人は追いません。
流行を重視しすぎると、売れ残りのリスクが高まります。
それよりも作業服由来の「定番・ベーシック」を中心に、長期的な販売を前提にしています。
商品交換の「価格」
……毎日同じ低価格で販売する「EDLP(エブリデー・ロープライス)」を徹底しています。
セールのための広告費や在庫処分のロスを削っています。
商品交換の「流通」
……ワークマンのECは、顧客の自宅に直接配送するのではなく、店舗網を活かした「店舗受取」を軸としています。
ワークマンは低価格であるため、配送コストが相対的に割高になってしまいます。
そこであえて店舗受取に絞り込むことで、お客様を店舗へ呼び込み、「ついで買い」を誘発させています。
情報交換の「メッセージ」
……ワークマンは近年でこそ、広告に有名人を起用していますが、原則として広告に多額の予算を投じるよりも、製品を愛用するインフルエンサーを「アンバサダー」として迎え入れています。
アンバサダーは商品開発の段階から参加し、そのリアルな意見を反映させます。
結果的に、信頼性の高い口コミが生まれます。


