Q.若手社員は意欲に欠けています。もうちょっとちゃんとしてほしいと思います。しかし注意するとむくれてしまいます。どうすればよいのでしょうか。
A.「気持ち」ではなく「行動」について注意や指導を行いましょう。
1.上司に反論できない…
私が会社員時代に最もイヤな思い出として記憶に残っているのが、
「気持ちを注意されたこと」
でした。
私が入社3-4年目くらいのことです。私から上司にきちんと伝えたことが、上司は聞いていない、と押し問答気味になったことがありました。
お互い証拠があるわけではないので、私はわかりました、次から気をつけます、と折れました(折れたつもりでした)。
ところが上司(女性)は突然ブチ切れて、「何その態度は!!私を馬鹿にしているの!?」と大・大・大・説教が始まりました。
もちろん、もしかしたら私はそのときむくれていたり、失礼な態度をとっていたのかもしれません。
しかし私は「うーんそうかしょうがない、ここは素直に謝っておこう」と表情に出さないでいた…つもりでした。
(その淡々とした態度が逆に「馬鹿にしている」と感じたのかもしれませんが。それこそ水掛け論なので…)
私がショックだったのは、決して馬鹿になどしていないし、失礼な態度をとったつもりは(自分としては)ないからです。
繰り返しますが「あれ勘違いかな」くらいに思っただけで、食って掛かったり、逆ギレしたつもりもありません。
だけど「馬鹿にしている」と上司は糾弾してきます。
それに対して私は「馬鹿にしていない」ことを証明しようがありません。
私は何を言っても無駄だと完全に心が折れてしまい、「すみません…気をつけます…」と下を向いていました。
それ以来私は、人の「気持ち」を一方的に決めつけてそれを責めたり非難したりするのは絶対に辞めよう、と心に誓いました。
2.差別になるのは気持ちか行動か
日本と欧米は…というステレオタイプの比較はあまり好きではありませんが、日本は欧米に比べて「事実・行動」よりも「気持ち」を重視するように思います。
日本のお笑い芸人がエディ・マーフィの真似をするのに顔を黒塗りにし、それが諸外国から非難されたことがありました。
そのとき日本人の多くの論調としては「エディ・マーフィを馬鹿にしたり黒人差別をしたりする意図はまったくない、むしろリスペクトしている」「ただ似せようとしただけだ」「だったら金髪のカツラをかぶるだけで金髪への差別だと言うのか。こうして騒ぐこと自体が黒人への差別だ」というものでした。
まとめると「差別する意図はないのだから、これは差別ではない」、つまり差別かどうかを決めるのは『気持ち』だ、とする論調です。
しかしアメリカではそうは受け取られません。いくらリスペクトだろうが、差別する意図はなかろうが、顔を黒塗りにする「行動」そのものが差別なのです(その歴史的背景は割愛します)。好きだから真似をした、という「気持ち」はここでは関係ありません。
「気持ち」重視か、「行動」重視か、の視点が異なると、話はかみあいません。
3.行動に関してのみ指導や注意をしましょう
冒頭の質問に戻ります。
若手社員に「ちゃんとやれ」「やる気を出せ」などと、「気持ち」に関する注意をしていないでしょうか。
そう言われた若手社員は99%「ちゃんとやってるよ…」「やる気がないわけじゃないよ…」と聞き入れないことでしょう。
ましてや、この若手社員がもし心の中ではやる気に満ち溢れていたら、ひどいショックをうけるでしょう。でもかつての私のように、「やる気がある」ことを証明することはできず、黙ってしまい、場合によっては退職という道を選んでしまうかもしれません。
失敗や好ましくない行動をとったとき、それを「ちゃんとしていない」「やる気がない」と気持ち面だけで一方的に断罪するのは絶対にやめましょう。
多くの好ましくない行動は「正しい行動を知らない」もしくは「正しい行動を知っているが、できない」だけです。
自分が正しいと思ってやっている行動に「やる気があるのか」「馬鹿にしているのか」などと言われたら、これほどやる気がなくなることはありません。
気持ちを問題にせず、適切な「行動」をしたかどうか、そして適切な行動でなかったらその適切な行動を知っているか・できるかだけに着目しましょう。
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