私はビジネスが嫌いなビジネスコンサルタントです。幸本陽平 (株)東風社

※下記、【1】~【8】あります。お急ぎの方は【5】くらい、さらにお急ぎの方は【7】くらいからお読みください

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私は、ビジネスが嫌いなビジネスコンサルタントです。

大学を出て、働くようになって約20年。
この年になって初めて、私は

「あれっ、俺ってビジネスが別に好きじゃないな」

と気づきました。

念のためですが、これはキャラ付けとか、逆張りとか、ブランディングとか、そういうことではありません。

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私はビジネスついて考えたり、調べたり、学んだりしたりするのは好きです。
それと、ビジネスを頑張る人を支えたり、手伝ったりするのは好きです。

ただし、自分自身がビジネスを通じて「成長したい」「何かを成し遂げたい」「世の中をこう変えたい」という欲求はまったく無い、と気づきました。

ビジネスはあくまでも生活のための手段であり、目的ではない。
ビジネスを他のもの・ことに最優先させるわけではない。

そういう意味での「ビジネスが嫌い」です。

「結局、好きなのか嫌いなのかどっちなんだ」

このように考える背景や経緯を以下でお伝えします。

【1】私が就職先を選んだ経緯

私は一橋大学商学部卒で、ゼミはマーケティングでした。
そのまま新卒で外資系化粧品会社のマーケティング職として採用されました。

今も当時も、たいていのメーカーは新卒を一括採用し、そこから入社後に配属を決めます。一般消費財だと、たいてい地方の営業所に配属され、まずは現場を知りなさい、とするのが一般的です。

ワガママな私は「最初からマーケティング職がイイ」と考え、珍しく職種別採用をしていた外資系化粧品会社を受け、採用されました。
(今思うと、縁もゆかりもない地方都市で営業経験を積むことはものすごく有益だと思うのですが、本論と外れるので省略します。)

この経歴だけを見ると「なんだ、マーケティングとかビジネスが大好きじゃないか」と思うかもしれません。
しかし私が好きなのは「客観的な存在としてのビジネス」です。このあたりはもう少しお付き合いください。

私はもう一社、食品メーカーからも内定をいただいていました。
その会社ではなく、化粧品会社を選んだのは、化粧品会社が職種別のマーケティング採用だったのに対して、食品メーカーはおそらく最初は地方の営業職になることも関係しています。しかしそれだけではありません。

化粧品について、「自分が使わない」こと、そして「同じような口紅でも5百円のものもあれば5千円のものもある。なぜ?この差はどこから?」”面白い”と思ったこと、それが化粧品会社への就職の決め手です。

この頃から、「面白さ」を重視して仕事を選んでいたことがわかります。決して「化粧品を通じて世の女性を美しくしたい」とか「世界的に有名な化粧品会社でキャリアを積み、一流のマーケティング専門家になりたい」などとは思っていなかったのです。

まず「自分が使わない」、だからこそどういう商品なんだろう?お客様は何を求めて、どう好きになって化粧品にお金を払うんだろう?と純粋な興味がありました。

さらに、マーケティングに興味があったので、「同じような商品でも10倍の価格差がある、そのカラクリはなんだろう、知りたい」という欲求がありました。

世の中を変えたいとか、自分はこうなりたいとか、そういったことはなく、純粋に「面白そう」「やってみたい」、それだけで就職先を選びました。

その後、転職はしつつも化粧品の仕事は8年続けたので、化粧品の仕事そのものが「面白い」ことは間違いありませんでした。

【2】個人で独立開業

30歳のとき、妻が妻の地元の広島に帰って開業したいと言いました。

私はビジネスそのものは「面白い」と思っていたので、中小企業診断士の資格を取得していました。また、さまざまなビジネスに触れられるコンサルティング職に興味がありました。化粧品だけではない、いろいろなビジネスと接することができたら「面白い」と思ったからです。

そこで私は30歳で退職し、妻の郷里の広島に夫婦で移住し、ひとりコンサル・研修事務所を始めました。広島には妻の親戚以外、知り合いは一人もいません。ここでスキルなし金なし人脈なしから大成功しました、その秘密を知りたければ私のオンラインサロンに…と言いたいところですが、スキルなし金なし人脈なしなので、普通にうまくいきませんでした。

コンサルも研修も、目に見えない商品です。そこで買い手が選ぶ決め手の多くは「知り合いだから」「知人の紹介だから」、あるいは「大手の会社だから」。縁もゆかりもなく、ひとり事務所の私のコンサルを受けたい人なんているわけがありません。コンサル職は、普通は前職の紹介とか、過去の取引先とか、地元の同級生のツテとか、そういったところを通じて受注し、顔を広げるのが一般的です。しかし私にそんな人脈はありません。さらに出不精なので人脈が広がることもありません。

また、私の主領域が「マーケティング」だったことも当時は致命的でした。東京ではマーケティングが周知され、マーケティングでご飯を食べている企業や個人がたくさんあります。しかし地方だと「ウチは広告はやらないから」「ウチは中小企業で関係ないから」などの反応で、マーケティングの意味を伝えることすら困難でした。(しかしこれは私のやり方がマズかったのもあります。地方だからマーケティングが不要、ニーズがない、ということではありません。)

だから私はコンサルでございます、研修講師でございます、と威張ったところで、仕事はやって来ません。そうなると、本来のコンサルや研修講師としての仕事以外に、「どうやって仕事を受注するか」を考えなければなりません。

するとこれが、びっくりするほど面白くないのです。

「面白いかどうか、そういう問題じゃないだろう。仕事なんだから」
「独立開業したら自分で全部やらなきゃいけないなんて当たり前だろう」
「ビジネスの専門家ならその仕事を受注することも含めて考えればいいじゃないか」

これらの意見はごもっともですし、実際に私もそのように考えていました。

自分が勤務する会社や他者・他社のビジネスを考えることは好きだし得意なのに、自分のことになると、まったく考えられないのです。「考えたくない」と言ったほうが適切かもしれません。

100%私のワガママや勘違いであることを承知で言うと、自分はプロ野球選手になったつもりがチケットがどうやったら売れるかを考えなければならなくなった、と感じるくらいでした。それほど仕事を受注するための活動は「面白くない」「やりたくない」ことでした。

そうは言ってもだから受注のための取り組みをしません、というわけにもいきません。めんどくさいなあと思いつつ、本業(と自分では思っていること)をしながら、顔を売るように努力しました。

地元の公的機関の業務をしたり、研修会社に登録して研修講師の仕事を受けるなどして、廃業しない程度にはコツコツ継続してきました。ビジネスそのものは「客観的に」好きなこともあり、あまり知識がないテーマの業務を依頼されても、調べたり学んだりして「ハイできます」と即答し、ある程度仕事を請け負えていたのもなんとかやって来られた要因かと思います。

その後、2015年にはマーケティングのビジネス書を出版し、2020年春時点で計4冊のビジネス書を執筆しました。

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その後も相変わらず、ビジネスを「客観的に」好きではあったものの、自分がビジネスを通じて何かを成し遂げたい、世の中をこう変えたい、などの願望はありませんでした。

「このまま受け身じゃマズい、何か能動的に自分から仕掛けないと」と思うものの、どうにもアイデアがわきません。それに自分はコンサルタント=ビジネスのプロでありながら、自分が立ち上げたビジネスが失敗したら恥ずかしい、という思いもありました。

そうして受身的に仕事が降ってくるのを待つ日々が続き、それはそれでなんとかなっていました。

【3】コロナでピンチ、そして気づく

そんなこんなで過ごしていた2020年、独立開業して10年が経過した年に、コロナウィルスがやってきました。

研修などの仕事がピタリとなくなり、収入にも困りました。当初は「今はいいインプットの時間」などと強がりましたが、夏頃になるとそうも言っていられなくなります。目の前のやるべき仕事が少しずつ減っていくと、さまざまなことを考えました。

まずは「私と仕事」について考えました。

私はどういう仕事をしたいのか?
仕事を通じてどんな価値を提供できる・提供したいのか?
仕事で何を成し遂げたいのか?

そして「稼げない今、これからどうやって稼ぐか」を考えました。

コンサル・研修の仕事が減った今、自分は何ができるのか?
他にどんなことだったらお客様に喜んでもらえるのか?
新たな事業を起こすとしたら?どうやって金を稼ぐ?

…何もない!

そう、これらの答えが何も思いつかなかったのです。

私はビジネス自体には興味があります。
でもそれはビジネスの対象が外から与えられたときだけだったのです。

会社に勤めて、その会社の売上を増やす。
…ブランドを強くする。働きやすい環境をつくる。効果的なプロモーションを考えて実行する。

クライアント企業から依頼を受けて、その企業の問題を解決する。
…社長の相談に乗る。社員にわかりやすく指導する。営業や人事の仕組みを見直す。

すべて受け身、ソトから受託した仕事です。
自分の商品やサービスを作り、売り込む!活動にはほとんど興味がない、と気づきました。
同時に、自分はビジネスを通じて何かを成し遂げたい!という願望がないことも(うすうす気付いてはいましたが)改めて確認したのでした。

「あれ、俺って(外から降ってくる課題を考えたりするのは好きだけど)
ビジネスそのものは別に好きじゃないじゃん!」
「学者みたいに研究したり、客観的にコンサルしてアドバイスしたりすることは好きだけど、自分でビジネスを立ち上げてグイグイ引っ張っていきたいわけじゃないじゃん!」

ようやく気付いたのでした。

とはいえ、これは最大の自己矛盾です。私の仕事そのものが「ビジネスをなんとかする人」だからです。料理が嫌いな料理人の作った食事を食べたいでしょうか。ダンスが嫌いなダンサーの踊りを見たいでしょうか。そう思うと、私は「ビジネスを好きだと思わなければならない」と自分の心を縛り付けていました。

【5】ビジネスが嫌い=むしろ自分の強み!

そうは言っても、自分の心はコントロールできません。料理人だって、家ではまったく料理しない人はいるでしょうし、ダンサーだってダンスが好きではないけどたまたまうまくて適正があったからプロになっただけ、という人もいるでしょう。

当初は私も自分自身について「ビジネスコンサルタントなのにビジネス嫌いっておかしい、そんなはずはない」「じゃあもう自分の人生も仕事も全否定だ、矛盾だらけだ」と思っていました。

でも「好き」と「それについて成果を出し、お金をもらう」は別のことでもいいのではないでしょうか。仕事をする人、みんながみんな心から仕事が大好き!ではないはずです。私は仕事は好きじゃないよ、でも仕事だからやってるよ!って考えは何もおかしくないよね、そういうコンサルタントがいたっていいんじゃない?第一自分の心にウソはつけないよね、と思いました。

「別にそれでいいよな」と思えたときは目の前が開けたような気がしました。決してこれまでウソをついていたわけではありませんが、どこか取り繕って「コンサルタント・研修講師『らしく』しなきゃ」とかしこまっていた自分がいたように思えます。

だから私もこれからはこうして「ビジネスは特に好きではないけど、仕事としてお金をいただく以上はちゃんとやって成果を出します」と宣言することにします。

むしろ、ビジネスが好きではないからこその「強み」もあると考えています。
それは、コンサルタントや支援を行う際は、関係する人は自分と同じく「ビジネスが好きではない」かもしれない、という前提で考えていることです。

言い換えると、本人のやる気や意欲に依存しないようにするのです。
コンサルタントや、そこに依頼をしてくる人たちは、少なくともビジネスについて意欲があり、この問題をなんとかしたい、なんとかしましょう、という人たちです。ビジネスに対して「熱」を持っています。もちろんそれ自体は良いことだと思います。

それに対していわゆる「現場」の人たちはそうでもなかったりします。なるべくならラクをしたい、早く帰りたい、余計な業務が増えるのはイヤだ…。これも人間として当然であり、肯定も否定もできません。

これに対して「熱」に頼った改善策、すなわち意識改革だとかモチベーションアップだとかに頼った取り組みをすると、失敗してしまいます。仕事は金を稼ぐためであってそれ以上でも以下でもない、そんな風に考える人でもできる・やりたくなる…そんな施策のほうがうまくいきます。

【6】ラクをしていいじゃないか!

これに関してはある思い出があります。私がある自治体の職員に業務改善をテーマに研修を行ったときのことです。

業務改善について、こんな説明をしました。(かなり要約しています)

「業務改善とは、簡単に言えば『ラクをすること』です。同じ作業だったら、なるべくラクに出来たほうがいいですよね。具体的には、10人より8人、5時間より3時間でできたほうがいいわけです。改善すればラクになるし、その浮いた時間や労力を別のところに回すことができます。業務を改善する、というと難しく聞こえますが、『どうやったらラクになるか』と考えてみてはどうでしょうか」

ところが研修終了後、その自治体の研修担当の方からこんな趣旨のクレームを受けました。

「業務改善はラクをする、という表現はいかがなものか。仕事とは真剣にがんばって取り組むものである。ラクをすることがいいことであるような指導はしないでもらいたい」

私の頭の中にはいくつもの「?????」が浮かびました。

私は決して「手抜き」や「サボり」を推奨したのではありません。同じ成果を出すならラク=費やす労力や時間が少ないほうがいい、という至極当然のことです。

人間はラクをしたいから徒歩から馬車へ、そして自動車を発明しました。衣服を洗うにも洗濯板から洗濯機へ、そして乾燥まで自動にしました。いずれも「ラクをしたい」から進歩があったのです。

ところがその自治体の人事担当者は「ラクをする=最小の労力で最大の効果をあげる」ことと「サボる、手を抜く」ことを混同していたようです。しかし実際、このような見方をする人は多いのではないでしょうか。辛いことや大変なことにこそ価値がある、ラクして得たものに意味はない…と。

とはいえ心の中の本音では、9割以上の人が私に賛同してくださるのではないかと思います。一部のビジネスが好きで好きでたまらない人、ビジネス上の苦労がまったく苦労ではない、という人は、その苦労自体が楽しいんだ、ラクをするとはけしからん、と思うかもしれません。

しかし実際にはほとんどの人が、同じ成果ならラクな方がいいし、同じ労力ならより多くの成果を残したいと思うはずです。「効率化」「コストパフォーマンス」と言い換えたら賛同してくれると思います。「ラクをする」もそれをわかりやすく言い換えただけで、結局は同じ意味です。

その自治体担当者のように、汗水たらして必死に頑張ることこそが価値だと考える人も一定数いるのでしょう。残念ながらそのような方は価値観が合わず、私のコンサルや研修を受けても効果がないでしょうし、それ以前に受けたくないかと思います。

【7】ビジネスだからって常に前向きで明るくなくていい!

実は本音では「仕事はそこそこでいい」と思っている経営者の方も多いように思います。表立ってそう言うとやる気がない、なめている、と思われそうでそう言えない、それが本音ではないでしょうか。

中小企業の二代目・三代目経営者の中には

「昔からこの会社を継ぐのが当然だと思っていた、他の選択肢はなかった」「社会貢献とか会社の存在意義とか、そんなことよりも社員がいるから会社を続けなくちゃいけないだけだ」

このように考える方も実際には多いように思います。

私はそれでもいいと思います。みんながみんな、ビジネスが大好きで、寝食を忘れて励む、そんな必要はないと思います。「家族を食わせるためにやっている」、それでいいのではないでしょうか。そして私も同じだからこそ、そんな人に寄り添って力になれたらと考えています。

私は実名でTwitterアカウントを作り、ほそぼそとやっています。そこでフォローしている人を見ると、少なからず「キラキラ」した人がたくさんいます。

経歴に、過去にビジネスで成し遂げたことや自分の思いをビッチリ書く人。
ポジティブな自分なりのビジネス論をどんどんツイートする人。
常に「成長」「前向き」「感謝」「自省」している人。

そういうのを見ると「うわぁ…」と正直ひいてしまいます。
自分はそこまでビジネスに熱くなれないからです。
そんなことより週末にBBQする方が楽しいよね、おいしいし、と思います。

私にとって仕事の一番の目的は「自分と家族の食い扶持を稼ぐこと」です。

何かを後世に残すとか、自己実現するとか、社会に貢献するとか、成長するとか、そういったことは結果的にそうなればいいなとは思いますが、少なくとも一番の目的ではありません。

私の仕事に「ありがとう、助かったよ」と言ってもらえ、適切なお金をいただける。それが私の仕事の目的です。

だからビジネスそのものが人生の目的や意義になることはないな、と思うのも「ビジネスが嫌い」な理由の一つです。ビジネスはあくまでも私にとって(生活のための)手段であり、目的ではないからです。

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【8】最後に

以上、独立して10年超、働いて約20年の「モヤモヤ」を一通り書きました。

ビジネスが嫌いなビジネスコンサルタントなんて信頼されないのではないか。
仕事に夢や目標がない、そんな人に仕事を頼みたいだろうか。
こう書くことで一部だけを切り取られて「この人は熱が薄い、やる気がない人だ」と思われないだろうか。

でも、ここまで書いたことが偽らざる私の本音です。

私はコンサルタントや研修講師として、お客様には全力で奉仕します。

でもそれは報酬に対する「仕事」だからです。
自分がこの世に何か残したいとか、仕事を通じて社会を変えたいとか、自己実現したいとか、そういった気持ちはまったくありません。

ビジネスそのものについては強く興味があります。でも自分がビジネスで何か成し遂げたいとか、自分を磨きたいとか、そういったことへの興味はありません。こういう意味での「ビジネスは嫌い」です。

以上を読み、私に賛同してくださる方もいれば、気持ちが離れていってしまう方もいるかもしれません。

しかし私も40歳を過ぎ、もう上辺を取り繕って生きていくことはできません。

「あんたの思想信条や哲学、仕事に対する考え方なんてどうでもいいよ!ちゃんと仕事さえしてくれれば!」

そんなお客様もいらっしゃるのではないかと思い、この文章を書きました。

もちろんこれは決して「私が一方的に顧客を選ぶ」わけではありません。
お互い思想信条が近いほうがハッピーだよね、というだけのことです。

ビジネスが嫌いなビジネスコンサルタント、面白そうだな、と思っている人がひとりでもいらっしゃれば、私は全力でご協力したいと思います。

株式会社東風社 代表取締役
幸本陽平

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