意見を言わない若者たち
最近、多くの企業で若手社員が「自分の意見を言わない」「なるべく目立たず、存在を隠そうとする」傾向があると感じます。
会議で積極的に発言せず、注目を浴びる業務を避け、できるだけ目立たないポジションに身を置くことを選んでいるかのようです。
この現象にはさまざまな理由が考えられます。
リモートワークが広がり、直接のコミュニケーションの機会が減少したことで、発言するタイミングがつかみにくくなっていることや、上司や先輩からのフィードバックが受けにくくなったことが一因かもしれません。他にも、過度にリスクを回避し、「間違いを指摘されるくらいなら黙っていた方が良い」という意識が働いている可能性もあります。
また、私は昨今のネット「炎上」の乱発も一因ではないかと考えます。各種ネットニュースなどの媒体は、読者の注目を集めようと「有名人○○が問題発言で炎上!」などと騒ぎ立てます。実際には多種多様な意見の一つにすぎないものでも、「反対が多数!炎上!」と炎上を捏造します。それを見ていると「少しでも炎上しそうな可能性があることは言わないほうがいい」「何も言わなければ炎上しない」と解釈しても無理はありません。
「目立つこと」が「目立たないこと」の何倍もリスクがあると解釈してしまうのです。
若手社員にとって、意見を言わないデメリット
しかし、意見を言わずに目立たないことは、以下のデメリットがあります。
1. 成長機会の喪失
意見を言わないと、フィードバックを受けることが少なくなります。それらの中には「お小言」や「お説教」もあるかもしれませんが、ゼロよりはマシです。フィードバックがないことで、自らの成長を制限してしまいます。
2. キャリアの停滞
職場で自分の存在感を出さくなり、評価や昇進にも影響を与えるでしょう。上司や同僚からの認知が低くなり、責任のある役割を任されるチャンスが減少します。結果的にキャリアが停滞してしまいます。
3. 自信の低下
本当は意見を期待されているのに、意見を言わないことで、自信を喪失してしまう可能性があります。そうなると、まわりも期待しなくなる…さらに積極的な発言を控える…と、悪循環に陥ってしまいます。
どのように対応すべきか
これに対し、会社や上司はどう対応すべきでしょうか。
「甘ったれんな、それじゃやっていけないぞ」とお説教したくなる気持ちもわかります。自らチャンスを逃しても自業自得だ、と。
しかし「意見を言わない=最良の生存戦略」と考えざるを得ない若手社員の気持ちも、ある程度は理解する必要があります。
対処法としては、月並みですが「聞く」ことです。「傾聴」と言ってもよいでしょう。上司や先輩が若手の意見を積極的に聞き、尊重することが大切です。多様な価値観を認め合い、尊重し合う風土作りを進めましょう。定期的に意見交換の場を設け、若手社員が積極的に発言できるような雰囲気をつくることも有効です。
それによって「発言すると聞いてくれるし、自分も評価してくれてトクが多い」と納得すれば、若手社員も意見を言うようになるでしょう。
特に重要なのは、意見に対して良い・悪いのジャッジをすぐにしないことです。部下の発言に対して「それって…」「私の考えだと…」とすぐにコメントを返すことが習慣になっていると「良いと思われることしか言ってはいけない」、「この意見が上司にとって良いかわからない、だから言わないほうがマシ」となってしまいます。
まずは評価せずにただ「聞く」ことが欠かせません。
代表・幸本陽平 プロフィール
- 化粧品デパートのマーケティング業務に携わり、その後独立。
研修や執筆、マーケティングをわかりやすく伝えるための活動などに取り組む。
(株)東風社代表取締役 中小企業診断士 一橋大学卒
広島市在住、新潟県長岡市出身
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