「質問が不得意」とは
私は近年、研修やコンサルティング、また日常の生活の中で、
「質問が不得意な人は意外と多い」
と感じています。
ここで質問が不得意、とは、単に「適切な質問が思い浮かばない」ケースだけではありません。
よくあるのが、「そのまま端的に聞けばいいのに、回りくどい・わかりにくい質問をしてしまう」ケースです。
たとえば、「りんご」という果物を知らない人がいて、りんごについて質問しようとしているとします。
このとき「りんごとは何か?」「りんごとみかんはどちらがおいしいのか?」とシンプルに尋ねればよいのに、
「りんごは梨とは違うと思うんだけど…昔からりんごもいろいろあって…りんごも梨も木になる果物としては有名だと思うけど…」
と、前置きを長々とつけてしまう人がいます。
なぜ、こうした質問の仕方をしてしまうのでしょうか。
なぜ、シンプルな質問ができないのか
一つの理由として、「質問すること=自分が知らないと認めること」と考えてしまうからではないでしょうか。
「知らないことを聞く」という行為は、相手のほうが自分より知識や経験があることを前提としています。
そのため、特に年齢や経験を重ねるほど、
「知らないことを認めるのは恥ずかしい」
「質問すると、自分の無知をさらけ出すことになるのではないか」
と感じてしまい、素直に質問できなくなるのです。
しかし、実際に質問を受けた側は、そのようには考えません。
むしろ、的確な質問をされることで、「自分の意見を聞いてくれる」と好意的に受け止めるものです。
特にビジネスの世界では、知らないことを知らないままにしておくより、積極的に質問して理解を深めることのほうが価値があります。
むしろ、知ったかぶりをしてしまうほうが、後々大きな問題を引き起こしかねません。
また、もう一つの理由として、「いい質問をしなければならない」と思っているのではないでしょうか。
ある人がこんなことを言っていました。
『いい質問ですね!』というフレーズが流行語になっていたが、私はこのフレーズは使わないようにしている。
なぜなら、『いい質問』と言ってしまうと、すなわち『悪い質問』もあることを意味する。
そうなると質問する人は『悪い質問をしてはいけない、いい質問をしなければならない』と質問そのものを萎縮してしまう。
あなたもそこまでではないにせよ、「いい質問」をしなければならない、と思っていませんか。
そのように自分に縛りを加えると、気軽にストレートな質問をすることができず、いい質問に「見せかける」余計な装飾をしてしまいます。
シンプルに質問する
あなたも先ほどのような「まだるっこしい質問」「相手にナメられないためにわざと余裕を見せる質問」をしていないでしょうか。
適切に質問するにはどうすればよいのでしょうか。
1)シンプルに聞く…「りんごとは何か?」とストレートに質問する習慣をつけましょう。
2)前置き言葉を使わない…余計な説明や言い訳を省きます。
3)質問は上下関係ではない…質問は知るための手段です。上下関係が定まるわけではないですし、ましてや恥ずかしいことではありません。
あなたは質問するとき、無意識のバリアを張っていないでしょうか。
「素直に聞く」「そのままを聞く」ことを大切にしてはいががでしょうか。
余談ですが、映画を宣伝する映画俳優へのインタビューを見ると、アメリカと日本で大きく違う点があります。
アメリカでは、インタビュアーは俳優に余計なことを言わず、「どんな映画か教えて」「見どころを教えて」とざっくり投げかけます。
それに対して日本は「殺陣のシーン、迫力がありました。どんな稽古をしたんですか?」と細部をピンポイントで質問する傾向があるように思います。
もちろんこの場合、日本は俳優が答えやすくするためのインタビュアーの配慮だ、とも言えます。
一方、悪く言えば回答を狭めて、答えてほしいことを誘導しているとも言えます。
「結論ありき」の質問にならないよう、気をつけましょう。
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