【新規事業×高価格×地方009】不満を解消するな – 「居酒屋トイレ理論」とは

「顧客の不満を解消し、愛される商品/ブランドを目指そう」

こんな言葉はよくに耳にします。
たしかに、不満を減らすことは大切です。
商品やサービスに対して不満があったら、購入してもらえません。

ただし、ここで気を付けなければならないのは、
「不満がない状態」と「満足している状態」はまったくの別物である
ということです。

「不満が無い」と「満足」は別 = 居酒屋のトイレ理論

私が「居酒屋のトイレ理論」と呼んでいるものをご紹介します。

居酒屋の満足度について考えてみましょう。
もしも、居酒屋のトイレが汚かったら、すごく嫌です。
仮に料理や接客がよくても、「あそこはやめておこう、トイレが汚いから」となります。

反対に、
「あそこは料理や接客はイマイチだけど、トイレがきれいだから行こう!」
と思う人はまずいません。

不満をなくすことは、ゼロをマイナスにしたに過ぎません。
居酒屋にとって、トイレがきれいであることは「避ける理由」になっても「選ぶ理由」にはなりません。

顧客は「不満」を言うことはできる。だが…

以下は、私が体験した事例です。
(といっても、私は後から関係者にこの話を聞いただけなのですが)

あるメーカーが、新しい日用品を開発しました。
まずは試作品を顧客に使ってもらい、アンケートを実施しました。
「ここが使いにくい」「重さが、大きさが」「色がイマイチ」
など、不満点を丁寧に拾い上げました。
そして改良を重ね、最終的にはすべての不満を取り除いた商品を完成させました。

しかし、まったく売れませんでした。

ちゃんと「顧客の声を聞き、それを商品に反映させる」というプロセスを経たにも関わらず、です。
いったいなぜでしょうか。

その商品は「不満はない」けれど、「わざわざ買いたい理由」もなかったのです。
不満のない商品は「無難」ではあるけれど、「買いたい!」と思える魅力的な商品にはなりません。

不満の解消は、購入の最低ラインに過ぎず、「買う理由」にはならないのです。

「ダメ出し」は誰でもできる

人は一般的に、「悪いところを見つける」ことが得意です。
商品の欠点、仕事のミス、言葉遣いなど。
「ここがよくない」「間違っている」といった指摘は、すぐに思いつきます。

しかし、目に見える不満をなくしたからといって、買いたい商品ができるわけではありません。
なぜなら、満足や感動は不満をなくすことではなく、「顧客自身も気づいていない価値」を提供してこそ生まれるからです。

「自分でも気づかなかったけれど、これはうれしい」
そんな発見があると、人は心を動かされます。

不満の解消ではなく満足、そして感動を

これは誕生日プレゼントを思い浮かべればいいかもしれません。

誕生日プレゼント、何が欲しい?と聞かれて、それをもらったら、少なくとも「不満」はありません。
しかし「満足」にはなりづらいですし、それを越える「感動」にはなりません。
自分でも予期せぬプレゼントをもらうからこそ、「感動」が生まれます。

もちろん、不満をなくす努力は継続しなければなりません。
むしろ、不満だらけではスタートラインにも立てません。

しかし、不満を解消したからといって、選ばれるわけではありません。
その先の「満足」、そして「感動」を生み出すことが必要です。

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