
前回の【新規事業×高価格×地方009】不満を解消するな – 「居酒屋トイレ理論」とは の続きです。
なぜ「望まれていない」バラの花を贈るのか
私が化粧品会社に勤務していた頃のことです。
当時、たくさんお買い物をしてくださるお客様を「ゴールド会員」と認定する制度があり、さまざまな特典を付与していました。
その中で、最も好評だった特典があります。
それはバラの花を一輪、誕生日に贈ることでした。
もし事前に
「ゴールド会員の特典、何が欲しいですか?」
「バラの花が特典だったらうれしいですか?」
といったアンケートをお客様に取っていたら、
「別にお花をもらっても…」
「ポーチやサンプルなど、実用的なもののほうが嬉しい」
…といった答えが大半だったでしょう。
しかし、実際には「もっとも評判がよかったゴールド会員向け特典」になりました。
バラをモチーフにしたブランドロゴだったこともあり、
(自分で言うのもなんですが)
「高級ブランドが『私のために』ブランドの象徴である生花のバラを送ってくれた」
ことは、相当なインパクトがあったようです。
「何が欲しい?」で欲しいものはわからない
もしも
「お客様はアンケートでポーチなど実用的なものを望んでいる。お客様の期待に応えよう」
と考えていたら、このような感動は生まれませんでした。
とはいえ、バラの花を贈るのは、手間やコストの負担がけっこうありました。
特に夏場は、再配達などがあると暑さで花がいたんでしまうこともあり、それなりにコストもかかりました。
それでも、この取り組みは継続しました。
なぜなら、お客様との心理的なつながりが圧倒的に深まったからです。
感動はアンケート結果からは見つかりません。
顧客の声を聞くことはもちろん大切です。
しかし、「何が欲しいですか?」という質問からは、お客様にとっても、私たちにとっても、想定内の答えしか得られません。
満足を越えた感動へ
ポーチをプレゼントしていたら、きっと「便利」「助かる」など、それなりの「満足」は提供できたでしょう。
そうではなく、お客様が予期も期待もしていないバラの花を贈ったことで、満足を越えた「感動」をご提供することができました。
「不満の解消」は、アンケートで可能です。
「満足の提供」も、それなりに顧客に耳を傾ければできるかもしれません。
しかし、「感動」となると、
「そこまでやるか!」「そんなの想像もしなかった!」
と思わせる発想が必要になります。
それは、ロジックでは解明できません。
だからこそ、ブランドや企業は顧客を主役として「感動をどう提供するか」を考え続ける必要があります。



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