新入社員にこそ「WHY」を伝えよう ※コラム完全版

執筆したコラムが、人材開発マネジメント株式会社様のウェブサイトに掲載されました。

タイトル:新入社員にこそ「WHY」を伝えよう

https://www.jinzaikaihatsu.co.jp/column/4765

 

 

上記サイトでは、文字数制限の都合により、内容を短縮しています。
以下、改めてコラム全文を掲載します。

新入社員にこそ「WHY」を伝えよう

■研修で遭遇する「今ドキ」の新入社員たち

新入社員研修で講師として指導をしていたときのことです。個人ワークの指示を出したところ、ある受講生の手がぴたりと止まっていました。そこで私は、わからないところがありますか?どこか悩んでいる?と声をかけました。しかし、その返答はなく、終始無言です。結局、そのままワーク終了の時間になってしまいました。

似たような事例は、昨今の研修で頻繁に起こります。私は「みなさん、今の時間は仕事中です。仕事の指示でわからないことがあればすぐに自分から質問しましょう」と言うのですが、なかなか新入社員には響きません。どうやら「自分がわからないことを認めるリスク」「何か言って否定されるリスク」を過剰に恐れているようです。

一方で、正反対の反応も体験しました。提出されたワークのアウトプットに対し、修正を求めたところ、露骨に不満そうな顔をして口をとがらせたのです。組織のルールよりも「自分のこだわり」や「自分らしさ」を優先し、それが受け入れられないと反抗的な態度を隠そうともしないのです。

■近年の新入社員は自尊心過剰?

「ミスをしたくない」「できないと思われたくない」、それでいて「自分の思い通りにしたい」という複雑な心理を昨今の新入社員からは感じます。一見すると単なる「自尊心過剰」のようですが、それが今どきの若者の短所、と済ませてよいのでしょうか

新入社員の彼ら・彼女らは、私たちと同じように、自分たちが育った時代環境に最適化した思考と行動をとっているに過ぎません。まず、デジタルネイティブである彼らにとって、失敗は「消せない記録」です。SNSの炎上やネット上のバッシングを日常的に目にしてきた世代は、一度のミスが取り返しのつかない致命傷になり得るという感覚を持っています。そのため、失敗を過剰に恐れる傾向があります。

また、親世代が経験した就職氷河期や、経済の長引く低成長を背景に、彼らは「頑張って上を目指すリターン」よりも「今あるものを失わないリスク回避」を優先する価値観を自然と身につけてきました。減点主義の教育環境も相まって、「挑戦して失敗するなら何もしない方がマシ」が最適な生存戦略になっているのです。

一方、小さい頃からスマホが身近にあり、「個性」や「自分らしさ」が求められてきた世代でもあります。自分らしく自己表現すること、したいときにしたいようにすることが当たり前であり、それを阻害する要因は「敵」にすらなるのです。

■正しい行動を承認し、学習を強化する

そんな彼らに「若いうちはたくさん失敗して…」とビジネスの理想論やあるべき論を語っても、これまで培った固定観念があるため、すぐには変わりません。それよりも、会社からの評価は「結果」ではなく「行動」に対してなされること、「失敗」は「何もしない」より評価されることを、早期に実感してもらうことが有効です。

たとえば資料作成を依頼する際、「やっといて」で丸投げすると、新入社員は「できない→相談は自分ができないと認める行為なので相談できない→抱え込む→締切なのに完成しない」と悪循環になります。そうではなく、「構成案の段階で一度見せて。その時点なら仮にズレが発生しても、早期に軌道修正できるから。ズレてもそれはあなたのミスではなく、より良い資料を作るために必要なプロセスだから、ズレていても全然かまわないよ」とわかりやすく指導します。

そして、指導した通りに途中で見せてくれた社員には「早い段階で相談してくれたおかげで、手戻りの時間が減って助かる。資料の質もよくなったよ」と、早期の行動を具体的に評価します。それによって、これが会社における「正しい行動」であると、学習が強化されていきます。

また、「自分らしさ」に固執する場合は、仕事の目的を「自己表現」から「他者への貢献」へと強制的に翻訳してあげる必要があります。「君のこだわりは理解したが、この資料を読む顧客が求めているのはその情報ではない。プロの仕事とは、相手の課題を解決することだ」と、個人の感情論ではなく、ビジネスの論理=顧客視点で淡々と、しかし毅然とフィードバックを行います。仕事へのエネルギーを、「自分らしさ」という内向きのベクトルから、「顧客満足」という外向きのベクトルへと転換させるのです。

■WHY=「なぜ」を伝えよう

何よりも重要なのは、若手社員には仕事のWHY=「なぜ、これをするのか」「なぜ、このやり方が求められるのか」をきちんと伝えることです。私たちは新入社員への指導というと、HOW=「仕事のやり方」やWHAT=「具体的なタスク」を指導しようとしてしまいます。

しかし、新入社員世代には「こういう仕事がある、こうやれ。それが仕事だ」は通じません。

・「なぜ、この仕事が社会や我が社に必要なのか」
・「なぜ、他の誰でもなく『あなた』にこれを託すのか」

といった根本的なWHY=「なぜ」を伝えます。若手社員は、心から納得できる大義があれば、驚くほどのエネルギーを発揮します。

安易に若手の甘い考えを正そうとする前に、まずは私たち自身が「なぜ」の大義を理解し、言葉で伝える必要があります。長期的に意味を持つ指導とは、「やり方」よりも「あり方」です。私たち自身こそ、若い世代との向き合い方を変える勇気を持つべきではないでしょうか。

 

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