【価値交換フロー】007 限定品=価値あり?

価値交換フローは、顧客にとっての価値とその価値を交換する仕組みを整えることで、次に取るべき行動を明確にする実行型フレームワークです。 自社のマーケティングのどこが不十分なのか、お客様が買わない原因はどこにあるのかを的確に突き止められるため、「マーケティング実務の普遍的な基盤」として、新規事業の立ち上げや、既存商品の立て直し、施策の優先順位付けなど、規模や業種を問わずさまざまな場面で活用いただけます。
マーケティングの肝は「価値」
価値交換フローの「価値」は難しい概念です。
研修などでは、この価値という概念がうまく伝わっていないな、と感じることがよくあります(逆に言えば、「価値」を理解できるとかなりマーケティングの上級者になります)。
私たちが自信を持って世に送り出したものが、必ずしもお客様にとっての価値と一致しているとは限りません。このような「ズレ」がどうしても存在することを理解し、そこに取り組むのがマーケティング、そして「価値交換フロー」を成立させるための鍵になります。
「限定品」の罠
たとえばよくあるのが、研修の課題で
「○○を売れるようにするにはどうしますか?」→「限定品を作って売る」
という考え方です。
もちろん、手に入りにくい限定品だからこそ喉から手が出るほどほしい!と感じる人もいるでしょう。限定品そのものを否定するつもりはありません。しかし、安易に「限定にすれば価値が上がるはずだ」と飛びつくのは本来の「マーケティング」ではありません。
- なぜその限定性に人は心を動かされるのか?
- それが最終的な売上にどうつながるのか?
それらを深掘りせず、ただ数を絞ったり期間を区切ったりするだけでは、本当の意味での価値にはなりません。
限定品に無条件に価値があるというなら、永久に「限定品」を出し続けなければなりません。
価値とは、企業側がスペックや希少性で定義するものではなく、それを受け取った人が心の中で決めるものです。
「○○をすれば、○○があれば価値になる」といった安易なものではありません。
それに、「価値」がそんなに簡単に生み出せるのなら、他社もあっさり真似をしてしまい、「価値」になりません。
「美味しいから価値」か?
飲食店を例に考えます。
あなたが飲食店を選ぶとき、「一番おいしい店はどこか」という基準だけで選んでいるでしょうか。おそらく、現実はもっと様々な要素を検討しているはずです。
- 「家から歩いてすぐだから」
- 「注文してから出てくるのが早いから」
- 「家族全員が食べられるメニューが揃っているから」
- 「財布に優しい値段設定だから」
味が良いことは、言わば「前提条件」です。美味しくないものを無理に売る必要はないですし、そもそも「おいしくないのに他の要素で無理やり売る」ことはマーケティングではありません。
ただ、美味しいだけで選ばれるほど、お客様の選択は単純ではありません。味だけでなく、その時の状況や利便性が、その人固有の「価値」となります。
この視点が抜けていると、「うちのほうが味(品質、性能)は上なのに、なぜあっちの店(企業、商品)が売れるんだ」となってしまいます。
あなたの物差しはあなた固有のものです
他人の頭の中を覗くことはできません。そのため私たちは、つい自分の物差しで価値を測ってしまいます。
- 「わが社の製品は、ライバル社よりもこんなに技術力が高い」
- 「3年も研究を重ねたんだから、価値がある」
そう信じたい気持ちは分かります。しかし、お客様にとってはその技術力も、3年の研究も、自分に何をもたらしてくれるかに関係がなければ、ただの情報に過ぎません。「価値」にはならないのです。
もし、自分が全く魅力を感じない、でも世の中で大ヒットしている、という商品を見かけたら、
「自分は価値を感じないけれど、世の中の人はこれのどこに価値を感じているのだろうか?」
と考えてみてください。自分と世間の人、どちらが「正しい」のでも「普通」なのでもなく、感じる「価値」が違うというだけです。その「ひとりひとり違う、価値」を認識することが大切です。
自分の「好き・嫌い」や「良い・悪い」というフィルターがあるのは、ある意味当たり前です。ここでいったん「それはそれ」として、他人の心にある価値を分析することが、マーケティング的な思考には欠かせません。
比較されない商品は存在しない
もう一つ、忘れてはならないのが、価値は「相対的」なものであるという点です。
お客様に購入理由を聞くと、「直感で決めました」「他とは比べませんでした」という答えが返ってくることがあります。ですが、それは言語化されていないだけで、無意識下では必ず何らかの比較が行われています。
- 他の同価格帯の商品と比べて、何が違うのか?
- これを選ぶことで、他の選択肢を捨ててまで得るものは何か?
共通の価値を提供するものは、たとえ業種が違ってもすべて競合になり得ます。その中で、お客様が「これは他とは違う」と感じられる差異があるからこそ、そこに選ぶ理由、つまり価値が生まれます。
価値を決めるのは常に「お客様」
価値とは、こちらが決めるものでも、押し付けるものでもありません。
画期的な材料を使っているからでも、限定品だからでも、長い年月をかけて開発したからでもありません。それらがお客様の生活や感情に作用し、他よりも「これがいい」と思わせる理由になっているか、が大事です。
「自分たちのこだわり」はもちろん大事です。ただし、それと同時に、お客様の目線に立って、自分たちの商品を眺めてみる姿勢を忘れないようにしましょう。そうすることで、これまで見えていなかった新しい価値が見つかるかもしれません。
次回は価値交換フローにおけるもう一つの重要な要素、「交換」についてお話しします。


