【価値交換フロー】010 広告は一方通行

価値交換フローは、顧客にとっての価値とその価値を交換する仕組みを整えることで、次に取るべき行動を明確にする実行型フレームワークです。 自社のマーケティングのどこが不十分なのか、お客様が買わない原因はどこにあるのかを的確に突き止められるため、「マーケティング実務の普遍的な基盤」として、新規事業の立ち上げや、既存商品の立て直し、施策の優先順位付けなど、規模や業種を問わずさまざまな場面で活用いただけます。
広告→情報交換 へ
「マーケティング」と聞くと、テレビCMやネット広告のような、華やかな広告活動を真っ先に思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
確かに広告は花形ですが、それはマーケティングという大きな仕組みの中の、あくまで一部分に過ぎません。
価値交換フローでは、この領域をあえて「広告」とは呼ばず、「情報交換」という言葉で整理しています。なぜそのように表現しているのかなど、今回は「情報交換」をテーマにお話しします。
「広告」と「広報」の混同
少し余談になりますが、世の中では「広告」と「広報」がごちゃ混ぜに語られることがよくあります。
例えば、ある企業のCMがSNSで炎上した際、「広報担当は何を考えているんだ」という批判を目にしました。しかし、広報と広告は全く別の仕事です。詳しい説明は省略しますが、広報=PRは「パブリック・リレーションズ」であり、広告活動には関与しません。
こうした混同が起きる背景には、「企業が外に向けて発信するものはすべて同じ人が担当している」という、受け手側のざっくりとしたイメージがあるのかもしれません。あるいは「広告」を担当する人のことを「広報」と呼ぶ、などと、単に間違って覚えているだけかもしれません。
こうした「外への発信」だけをマーケティングだと捉えてしまうと、適切なマーケティングは実行できません。
情報は「一方通行」ではない
一般的な広告は、企業からお客様への「一方的な」情報提供です。
- 「こんなに素晴らしい商品を作りました」
- 「今だけセールで安いです」
これらはすべて、こちら側からの情報発信です。
場合によっては単なる「押し付け」で、「スルー」または「反発」されることもあります。
それに対して、価値交換フローにおける「交換」は、
- 企業→お客様
- お客様→企業
両方のやり取りを指します。
広告は「企業→お客様」の情報の流れなのに対し、
市場調査は「お客様→企業」の情報の流れです。
市場調査がうまくいけば、お客様が今、どんなことに悩み、どんな瞬間に喜びを感じるのか。そして、お客様はどのような点に価値を見出しているのか。……といったことがわかります。
企業側がこうした「お客様の情報」を受け取ることができれば、より「お客様が求める価値」を提供しやすくなるでしょう。マーケティングの中心は常に、企業側ではなくお客様側だからです。
大量の広告で売れる時代ではない、どうする?
かつての大量生産・大量消費の時代であれば、とにかく大きな声で「新商品です!すごいです!新しいです!」と叫んでさえいれば、売れたのかもしれません。
今は商品ごとの機能差が少なくなり、お客様の知識や情報も莫大に増えています。一方的に「この商品はすごい」と連呼しても、お客様はサクッと検索したりAIに聞いたりして、「これはウソだろう」「自分にとっての価値ではない」などと会社側の思惑が見抜かれてしまいます。
かつては「良い商品」=「万人に良い商品」でした。従来品よりも軽い、耐久性がある、きれい、丈夫、長持ちする、そもそも今までできなかったことができる……など、いわゆる「スペック」の向上がそのまま売上の向上に一致しました。
しかし現在、「万人に良い商品」はほとんどありません。広告で新機能を声高に叫んでも、
「スゴいのはわかった。でも自分には必要ない」
と判断されてしまいます。
だからこそ、情報の「交換」が重要になります。
お客様のことを深く知り、その人が本当に求めているタイミングで、必要な情報を提供します。それによって「自分にも価値あるものだ。買おう」と行動に移すのです。
「買わせる」から「交換する」へ
価値交換フローが「交換」という言葉にこだわっているのは、企業側の独りよがりな視点を排除するためでもあります。
- 「どうすれば買わせることができるか」
- 「どんな仕掛けをすれば売れるのか」
こうした「自分たちが何をするか」という発想だけでは、本当の意味でお客様に価値を提供することはできません。
価値交換フローでは、
- まずお客様の求める「価値」を知る。
- その価値をお客様に届ける=交換できるよう、「商品」「価格」「情報」などを整える。
という流れになります。
一方的な「ウチの商品はいいですよ!」は単なる売り込みであり、マーケティングはないので注意しましょう。
ここまで、価値交換フローとは何かについて、全10回で解説しました。
次回以降は、実際の商品やサービスの成功事例について、価値交換フローを用いて解説します。
初回は「ワークマン」についてです。


