【価値交換フロー】013 セブンカフェのマーケティングを解説

価値交換フローは、顧客にとっての価値とその価値を交換する仕組みを整えることで、次に取るべき行動を明確にする実行型フレームワークです。 自社のマーケティングのどこが不十分なのか、お客様が買わない原因はどこにあるのかを的確に突き止められるため、「マーケティング実務の普遍的な基盤」として、新規事業の立ち上げや、既存商品の立て直し、施策の優先順位付けなど、規模や業種を問わずさまざまな場面で活用いただけます。

価値交換フローの詳細はこちら https://www.tofusha.co.jp/vex/
セブンカフェのマーケティング戦略とは?
「価値交換フロー」を用いて、企業のマーケティング戦略を解説します。
今回は、コンビニコーヒーの市場を開拓したとも言えるセブンイレブンの「セブンカフェ」を取り上げます。
現在、コンビニで挽きたて・淹れたてのコーヒーを飲むことは日常的になっています。
実は、セブンイレブンはこれまで何度も、カウンター横でのコーヒーの販売に挑戦してきました。
しかし、うまくいかず、撤退を繰り返してきました。
2013年スタートの「セブンカフェ」でようやく成功したと言えるでしょう。
では、「セブンカフェ」はなぜ成功したのでしょうか。
その理由を価値交換フローで解説します。
1.困難だった「価値」と「交換」の両立を実現した
マーケティングにおいて大切なのは、お客様が「これは自分にぴったりだ」と思えるかどうか(自分ごと化)です。
セブンイレブンは1980年代から4回も、店内でドリップしたコーヒーの販売に挑戦していました。
しかし、挑戦しては撤退する、の繰り返しでした。
当初は、あらかじめ店員がコーヒーをまとめて淹ておき、それを保温ポットから注いで提供する、というスタイルでした。
しかし、うまくいきませんでした。
お客様にとっての「価値」と「交換」のバランスが崩れていたからです。
作り置きのコーヒーは、時間が経つとどうしても香りが飛び、味が落ちてしまいます。
かといって、注文を受けてから一杯ずつ淹れるスタイルにすると、今度は提供までに数分間の待ち時間が発生してしまいます。
これでは、コンビニに「手軽さ」や「スピード」を求めるお客様にとって、心理的・時間的な「交換のハードル」が高すぎます。
この「品質(価値)」と「手軽さ(交換)」の二律背反をクリアしたのが、2013年に登場したセブンカフェでした。
2.潜在的な不満にアプローチした「自分ごと化」
セブンカフェが登場する前、コーヒーを日常的に飲むお客様の頭の中には、次のような不満がありました。
・缶コーヒーは手軽だけど、味や香りに物足りなさを感じる。
・カフェのコーヒーは本格的で美味しいけれど、わざわざ店に入って飲むのは面倒。それに1杯300円以上すると毎日飲むには財布に厳しい。
つまり、「手軽さ」と「美味しさ」が両立する選択肢が市場になかったのです。
そこでセブンイレブンは、提供する価値を
「手軽に、100円で手に入る、高品質の淹れたてコーヒー」
と定義しました。
「毎日美味しいコーヒーを飲みたいけれど、時間もお金もかけたくない」という、働くビジネスパーソンやドライバーなどの「場面」や「嗜好」にうまく重なる、強い「自分ごと」となる価値を創り出したのです。
3.他が真似できない圧倒的な「独自ベネフィット」
セブンカフェの成功を受けて、当然ながら競合他社も同様のサービスを開発し、追随します。
当時、他のコンビニも一斉にコーヒーマシンを置き始めたのを覚えている方も多いのではないでしょうか。
それでも「コンビニコーヒーといえばセブンカフェ」と認識され、選ばれ続ける理由は、「独自ベネフィット」にあります。
セブンイレブンは、ただコーヒーマシンを置くだけではなく、豆の選定、焙煎方法、さらには抽出する水にまで気を配りました。
そして、それらを「1杯100円(登場当時)」という驚異的な価格で提供したのです。
お客様が「どこでコーヒーを買おうか」と比較検討する際、セブンカフェが提示する「100円でこの香りとコク、しかもハズレがない安心感」というクオリティは、他社を圧倒する優位性となりました。
「缶コーヒーとほぼ同じ価格なのに、専門店に匹敵する本格的な味が楽しめる」というわかりやすい差異が、お客様に「だったらセブンで買おう」と迷わず指名買いさせる原動力になっています。
また、セブンイレブンは店舗数が最大のため、セブンカフェは「最大公約数の、王道の味」となっています。
そうなると他のコンビニは、セブンカフェに比べて浅煎りにしよう、深煎りにしよう…などと、味を差別化せざるを得ません。
結果的に、セブンカフェはますます多くのお客様に好まれるど真ん中・定番の味をキープすることができたのです。
4.「交換」を円滑にする工夫
どれほど素晴らしい価値を100円で提供できたとしても、購入手続きが煩雑だったり、提供に時間がかかったりすれば、忙しい現代人には受け入れられません。
セブンカフェは、商品の交換プロセスを効率化し、お客様のストレスを無くす仕組みとしました。
商品交換の効率化:
アイスコーヒーの場合、冷凍ケースから氷の入ったカップを取り出し、レジでお会計を済ませて、マシンにセットしてボタンを押します。
この一連の流れが、極めてスムーズに行えるように設計されています。
店員が手を動かして淹れたり、氷を取り出したりする必要がないため、ピーク時でもお客様を長く待たせることなく、高い価値を届けることが可能になりました。
流通(立地と店舗網):
全国に広がる圧倒的な店舗数が、そのまま「交換の場」としての強みになります。
「今、コーヒーが飲みたい」と思った瞬間に、すぐ近くにセブンイレブンがあるという物理的な利便性が、交換のハードルを下げています。
セブンカフェ × 価値交換フロー まとめ
セブンカフェの事例を、価値交換フローでまとめます。
価値の「自分ごと」:
「手軽さ」か「品質」か、の二者択一だった市場に対して、「100円で専門店品質」という、現代人の日常に深くフィットする価値を定義した。
交換の最適化:
セルフ方式の導入、さらに全国の店舗網を活かし、お客様が「いつでも、すぐに」淹れたてのコーヒーを手に入れられる仕組みを整えた。
セブンイレブンは「お客様が日常で求めている価値」を追求し、それをいかにストレスなく、かつ圧倒的なスピードで提供できるか、という「交換」の仕組みを整えました。
だからこそ、巨大な市場を生み出すことができたのです。
● お客様にとっての本当の価値は何か?(何を求め、何に妥協したくないのか)
● その価値を、お客様がいかにストレスなく手に入れられるか?
この一貫したフローを設計したため、現在のセブンカフェの地位を確立することができました。
【以下、補足です】
セブンカフェを、価値交換フローでさらに分析します。
「ついで買い」の相乗効果
セブンカフェの淹れたての美味しいコーヒー、という価値にひかれて来店したお客様が
「100円だし、一緒にレジ横のお菓子やパンも買おう」
という「ついで買い(クロスセル)」を誘発させています。
コーヒーが、店舗全体の商品の「交換」を円滑にするための「呼び水」として機能しています。
価格改定と価値の維持
原材料の高騰などに伴い、セブンカフェは何度か値上げを行っています。
しかし、それでも客足が衰えないのは、お客様の中で
「この品質であれば、数十円上がっても十分に交換に値する(他より良い)」
という納得感が確立されているからだと考えられます。


