
顧客の声そのままでいいのなら、プロはいらない
ビジネスをする上で
「顧客の声を大切にして、それを商品開発や経営に活かしていくべきだ」
とよく言われます。
確かに、お客様の意見を聞くことが良い商品や良い経営につながる、ような気がします。
しかし、本当にお客様の言うことをそのまま商品や経営に反映させればよいのでしょうか?
もしそうなら、経営者や商品開発・マーケティングのプロフェッショナルの仕事は必要なくなってしまうはずです。
では、なぜお客様の声をそのまま鵜呑みにしてはいけないのでしょうか。
具体的な事例を交えながら、対策も交えてご紹介します。
1.「非日常が欲しい」は本当?
ホテルや旅行、レストランなどのサービス業において、アンケートやヒアリングを行うと
「非日常の体験が味わいたい」
「日常を忘れて過ごしたい」
といった主旨の要望が頻繁に出てきます。
この「非日常」というキーワードについて、「うんうん、そうだよな」とあなたも思うのではないでしょうか。
だから「お客様が求める、非日常的な空間や時間を提供しよう」と思ってしまいがちです。
しかし、です。
これを本当にそのまま文字通り受け取っていいのでしょうか。
極端な例ですが、ホテルの部屋の中で、トイレの場所をあえて分かりにくく設計したとします。
これは確かに、日常生活ではありえない「非日常」の体験です。
しかし、この部屋に対して、お客様が「いつもと違う!素晴らしい非日常だ!」と喜ぶでしょうか。
もちろん、そんなことはありません。「トイレの場所が分からないなんて不便」「二度と泊まりたくない」とクレームになるはずです。
お客様は「非日常」を求めていると言っています。
しかし、日常生活のすべてを反対にしたいわけではないのです。
「非日常がいいよね」と言いつつ、実際は、清潔なベッド、セキュリティ、迷わない動線…といった、日常生活と変わらない安心感を求めています。
そうした安心感を基盤として、ちょっとした驚きや夢、感動のことを「非日常がいい」と言葉にしているのです。
2.お客様の要望は過去の知識と体験に基づいている
お客様に「どんな~がいいですか」と聞いたとします。
するとお客様は、過去の自分の知識や体験に基づいて答えます。
「知らない」ものは、想像すらできないからです。
「非日常の世界って素敵」
「ワクワクする体験がしたい」
お客様が答えてくれるのは、このような大まかな一般論や耳障りのいい言葉になりがちです。
(お客様への悪口や非難ではないですよ、これが普通で当たり前だという意味です)
お客様は、その言葉の裏にある細かい前提条件などを、いちいち言語化して私たちに教えてはくれないのです。
「ホテルの空間は非日常がいいです。あっ非日常といっても、トイレは我が家の使い慣れた便器と同じものを…」
なんてことは言ってくれません。
それに対して
「お客様が非日常と言ったから、何もかも非日常の世界にしよう」
と文字通りに実行すると、
「いや、求めていたのはこんなものじゃない」
と突き返されてしまいます。
自分で非日常がいいと言ったにもかかわらず、です。
マーケティングにおいて、お客様の発言はあくまでも「自身の知識や経験に基づいた」「自分が触れた、外側について」にすぎません。
その奥にある本当のニーズを読み解くのが、私たちのようなプロの仕事です。
3.意見を大切にするが、鵜呑みにはしない
「お客様の意見を大切にする」
と
「お客様の意見を鵜呑みにする」
は、まったく異なります。
お客様が発した言葉そのものを「正解」としてはなりません。
お客様がなぜその言葉を発したのか、その背景にある不満や言葉にできない潜在的な願いは何か、と掘り下げることが必要です。
たとえば、先ほどのホテルの例であれば、「非日常」という言葉の裏には何があるでしょうか。
それは「日々の忙しさから解放されたい」だったり、「普通の家にはないようなインテリアに囲まれて特別な時間を過ごしたい」だったりするかもしれません。
それを実現するために必要なのは、スタッフの丁寧な接客やセンスのいいインテリアの工夫など、になります。
単に「普段の日常とは違う、変なこと」ではありません。
ここに気を付けないと、お客様の声を聞けば聞くほど、お客様の真の要望からは離れてしまう、なんてことになりかねません。
4.プロはお客様の言葉にならない本音をカタチにする
では、私たちは経営や商品開発において、どのようにお客様の声に向き合えばよいのでしょうか。
お客様の言葉は氷山の「見える部分」に過ぎず、その下の「見えない部分」にこそ本音があります。
そこをいかに突き止めるかがポイントです。
・なぜその言葉?を深掘りする
お客様が発したキーワード、「非日常」「おしゃれ」「便利」などをそのまま受け取るのではなく、なぜそう考えたのか、を深掘りします。
・思考と行動は異なる
「こういうものが欲しい」という意見を鵜呑みにしてGOサインを出さないよう気を付けます。
「いいと思う」と「お金を出して買いたい」は異なります。
・不満を満たしても満足にならない
お客様は不満要素を述べることはできます。
しかし、それを解消しただけでは「不満がない商品」になるだけで、「満足する、欲しい商品」になるわけではありません。
お客様の声を聞きすぎて、「不満の解消」にばかりのめり込まないよう気を付けましょう。
まとめ
「お客様の意見に耳を傾けます」
「お客様のご要望にこたえて作りました」
とあるのを見ると、顧客ファーストのいい会社、と思うかもしれません。
しかし実際は、氷山の見える部分だけを見ているかもしれません。
本当の意味での顧客ファーストとは、氷山の水面下、すなわちお客様自身も気づいていない、言語化できていない真の欲求に気づくことです。
お客様の意見を取り入れているのに、なぜか売上に繋がらない…
とお悩みでしたら、それが氷山の上だけではないか、氷山の水面下を本当にとらえているか、と見直してみてはいかがでしょうか。
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