マーケティング~なぜ値引きではなくポイント進呈なのか

ポイントをプレゼントする理由は?

私はある宿泊予約サイトに会員登録しています。

そのサイトはたまに期間限定で使える500ポイントをプレゼントしてくれます。

たとえば今月末までの期間限定で、そのポイントを使用して予約すると500ポイント=500円分の値引きになるわけです。

このようにプレゼントされると、ラッキー、じゃあそのポイントを使ってこのサイトで予約しようかな、と思いますよね。

でも考えてみてください。

これって500円値引きと同じですよね。

だったら、ポイントプレゼントのようなまどろっこしいことをせずに、シンプルに

「今月の予約でしたら、1回だけ500円値引き!」

にしてもいいわけですよね。システム上も大して違いはなさそうですし。

なぜ「500円値引き」ではなく「500円相当のポイント進呈」にするのでしょうか。

保有効果=自分のものは価値あり!

それは「保有効果」が関係しています。

人は自分が持っているものは実際以上に価値を高く見積もる、という傾向があります。

たとえばあなたは人気のコンサートチケットに3万円までなら出してもいい!なんとしてでも行きたい!と考えているとします。

すると運良く定価の1万円で購入することができました。

そこに「コンサートチケットを5万円で売ってほしい!」と言ってくる人がいました。

あなたは売るでしょうか?

おそらく売らないですよね。どうしても行きたいコンサートですから。

あれ?でも考えてみてください。

あなたはそのチケットは「3万円までなら出してもいい=3万円の価値がある」と考えているはずです。

ということは、5万円はその価値を上回っているので、5万円で手放すのが合理的な判断ではないでしょうか?

でも、手放したくない。これが「保有効果」です。

自分が手に入れたもの、あるいは手に入れたように「感じる」ものは、実際以上に価値を感じて手放したくなくなるのです。

まずは保有してもらう

これを活用したわかりやすい例が「お試し無料」「返品無料」です。

そこまで欲しくない、あるいは性能などに懐疑的なものについても、まずは手にしてもらう=保有してもらう。

すると実際以上に価値を感じ、手放すのが惜しくなり、実際には返品せずに使い続けるのです。

洋服店で店員が試着をすすめるのも同様ですね。一度袖を通すことで自分のもののように「感じる」ことで、手放したくなくなるのを狙っているのです。

冒頭の「期間限定500ポイント」も同様です。

500ポイントをいきなりもらうことで、そのポイントは「自分のもの」になります。

使わずに期限が来たら、それを失ってしまう。

人間は「得る」と「失う」だったら、失うほうが感情の動きが大きいのです。

たとえば「500円もらう」ことと「500円失う(なくす)」ことを比較してみてください。

「感情の振れ幅」という観点で考えると、「もらってラッキー」よりも「なくした、悲しい!」の方が感情がより大きく動きますよね。

だから、もらった500ポイントは失いたくない。それで「じゃあこのサイトで予約しようか」になるのです。

一方、500円値引きだと「その予約サイトが(勝手に)してくれること」であり、現時点で何かを自分が「手に入れた」わけではありません。

だから、ポイントプレゼントほどは心が動かされません。

ビジネスに保有効果を用いる

企業やお店は、お客様に「手放したくない」「自分のものを失いたくない」と思ってもらうことがポイントです。

一例として、ポイントカードの工夫があります。

15個ハンコがたまると、ギフトと交換」というポイントカードがあるとします。

このとき、あえてハンコを20個にしておき、最初の5個はあらかじめ押しておくのです。

これから必要なハンコは15個、という点は同じでも、「自分はもう5個のハンコをゲットした、失いたくない」という心理が働きます。

その結果、「じゃあこの店で買い続けよう」と思う傾向が強くなります。

保有効果をうまく活用してみてください。

代表・幸本陽平 プロフィール

幸本 陽平
幸本 陽平
化粧品デパートのマーケティング業務に携わり、その後独立。
研修や執筆、マーケティングをわかりやすく伝えるための活動などに取り組む。

(株)東風社代表取締役 中小企業診断士 一橋大学卒
広島市在住、新潟県長岡市出身

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