「付加価値」という言葉があります。
実際にビジネスの現場でよく使われている言葉です。
(私のようにマーケティングを本業としている人は逆にあまり使わないのですが…)
さて、この「付加価値」とは文字通り「付加された価値」という意味です。
ということは、「価値」とは「付加」されるもの、つまり「付け加えるもの」だと思っていませんか。
昔であれば、まさに「加える」ことが価値になりました。
●ケータイでテレビも見られます!
●ホットプレートでたこ焼きも作れます!
●炭酸飲料ですが健康にいい成分を加えました!
このように、価値を「付加」することがまさに「付加価値」となり、商品にとってプラスになっていました。
減らすことが価値にならないか?
しかし、あえて逆に考えてみることはできないでしょうか。
つまり、付加するのではなく、「引く」「なくす」「できなくする」ことが価値になることはないでしょうか。
たとえばスーパー銭湯です。
スーパー銭湯の価値は、むしろ風呂に入ること以外のことを「できなくする」ことにある、と捉えられるのではないでしょうか。
入浴中は、スマホもPCも見られません。強制的にリラックスして入浴するしかないのです。
しかし、いたるところで電波が入ってくる昨今では、そのような環境は逆にスーパー銭湯くらいでしかありません。
そうなると「何もしない」ためにスーパー銭湯に行く、という価値付けもあるのではないでしょうか。
(余談ですが、中国では、足つぼマッサージを受けている人はたいていスマホをいじっています。それではリラックスできない気がするのですが…。だからこそ逆に中国では無線LANがマッサージ店には必須なのだそうです)
行動を「減らす」ことが付加価値になる
究極のなくす・へらすものといえば、お客様の「動く」「選ぶ」「考える」といった行動です。
一昔前では、買い物は「楽しいもの」である、という前提で考えられていました。
しかし、本当でしょうか?
よほど自分が好きで選びたいもの以外、選ぶことすらラクをしたい、というのが本音ではないでしょうか。
そんな心理をとらえてか、最近ではファッションの定額レンタルサービスがあります。
こちらは好みに合った服をスタイリストが選んで送ってくれるというサービスです。
裏を返せば、自分で服を「選ぶ」ことはできず、スタイリストにおまかせになります。
ではこういったファッションのサービスを利用する人は、ファッションに強い興味がある人でしょうか?
あくまでも推測ですが、必ずしもそうとは限らない気がします。なぜなら、ファッションに興味があれば、自分で選んだ服を着たいだろうからです。
それよりも、「プロが選ぶおしゃれな服をおすすめしてほしいい、おまかせしたい」、もっと言えば「流行を追いかけたりお店に買いに行ったりするのは疲れる、ラクをしたい」という人が中心なのではないでしょうか。
価値を「付加価値=プラスするもの」とばかり考えると、お客様のニーズから離れてしまうことになります。
それよりも、「引く」「なくす」「できなくする」といったことで、お客様が「選ぶ」「考える」「動く」といったことをせずに済むようにできないか、と考えてみてはどうでしょうか。それこそが本当の「付加価値」かもしれません。
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