Q.新入社員が同期同士で「この会社では成長できない」「雑用ばかりやらされる」と文句を言っているそうです。どう対処すべきでしょうか。
A.「働く」こと、「雇用される」ことの意味を再確認させたほうがよいでしょう。
現在の経営者層と新入社員の年代とで、大きく異なるのが「情報量」です。
インターネット等で、新入社員には「働く」「仕事」についての情報が大量に入ってきます。
時にそれらは非常に断片的であったり、極端であったりするもの。
しかし新入社員だとそういったことに気づかず、入ってきた情報が真実でありすべてだと思いこんでしまうものです。
特に他者(他社)との比較は、否応でも情報が入ってきます。
そして比較することによって「この会社では成長できないのでは」「雑用ばかりで大事にされていないのでは」など、ネガティブな面ばかりを感じてしまうのです。
そんな新入社員には次の2点をきちんと時間をとって指導しましょう。
1)成長は仕事に一生懸命取り組んだ結果である
会社が社員を成長させること、社員が仕事を通じて成長することは、もちろん極めて重要です。
しかし手段と目的を逆にしてはいけません。
成長は、仕事に一生懸命取り組んだ「結果」としてついてくるものです。
「成長」を自分の目標にすることは本末転倒です。
何より、ストレートに言えば、会社は社員を成長させるために雇用しているわけではありません。
社員の成長は大事ですが、それは結果として会社に貢献するからこそ大事なのであり、「会社の業績なんてどうでもいい、社員の成長が第一」なんて会社があったら信用できません。
それに新入社員は「何が成長につながるか」がまだわかりません。
そのため、華やかなこと、流行のトピック、何やら横文字のマーケティングやカスタマーサクセスといった言葉に踊らされ、「それに比べて今の仕事は地味だし、別に誰でもできる。この仕事では成長できない、遅れを取ってしまう」と思いがちです。
しかし単調でつまらない日常の仕事の積み重ねが、結果として成長になるものです。
足し算や掛け算もできないのに、いきなり因数分解に挑戦しても答えは出せません。
「目の前のことを一生懸命やる、実はそれが一番成長につながっている」
このことを、次の「雑用」とも合わせて指導するべきでしょう。
2)雑用という仕事は無い、すべての仕事が重要である
仕事が雑用ばかりでつまらない、やりたくない…という気持ちもわかります。
しかしその仕事が「雑用」かどうかは、あなたの心が決めていることです。
すべての仕事には意味があり、価値があり、会社にとって必要です。
それを「雑用だからテキトーでいいや」と思うか、「確かに誰でもできる簡単な仕事だが、私は早く丁寧に行おう」と思うか、それは取り組む人の心がけ次第です。
先ほどの両者、どちらが会社にとって有用な人材でしょうか。どちらがより成長できそうでしょうか。
現在、政治評論家の杉村太蔵氏は、外資系金融機関で清掃のバイト(派遣社員だったかもしれません)をしていた頃、徹底的にピカピカになるように掃除していたそうです。するとその働きぶりが目に止まって社員にならないかと声をかけられたのだそうです。(講演などでのエピソードなので多少盛っているかもしれませんが…)
言い方を変えれば「雑用すら一生懸命できない人は、大事な仕事を任せられない」のです。
そして何よりも会社と社員の関係は「雇用関係」であることを忘れないでください。
会社は社員に何をすべきか指示する権限があります。社員はそれに従う義務があります。
だからこそ、社員は給料が安定的にもらえる、そう簡単にクビにはならない、などのメリットが引き換えとしてあるのです。
「やりがいのある仕事だけ、成長できる仕事だけしたい」のならば、厳しいようですが、個人事業主になるか、自分が経営者になればよいのです。
会社と社員の基本的な関係は忘れないよう、社員に指導する必要があります。
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