脳の「理由付け」を利用する

人は、物事に対して「理由付け」したくなります。

それをうまく利用することがビジネスのコツです。

…と言われても何のことかわかりませんよね。

講座を高く評価するのはどんな人?

書籍「ファスト&スロー」からある例をご紹介します。
(意味が変わらない程度にわかりやすくしています。)
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大学の教授が、学生に自身の講座の改良点を挙げさせました。

改良点を、あるクラスには「6個」、別のクラスには「12個」挙げるよう指示しました。

そしてその後あらためて、学生に講座を評価させました。

講座の評価が高くなったのはどちらのクラスでしょうか。

普通に考えると、改良点を少なく考えさせた「6個」のクラスですよね。「12個」挙げたクラスは、改良点を多く思いついた分、不満も多くなるはずだ、と。

ところが実際には、講座の評価が高くなったのは、改良点をより多い「12個」考えさせたクラスのほうでした。

講座の改良点を12個も考えるのはとても大変なことです。おそらくほとんどの学生が途中で「うーん、これ以上は思いつかない…」となったはずです。

すると脳はその「改良点が(これ以上)思いつかない」を「改良点が思いつかない」と変換し、「それは講座が良かったからだ」とすり替えてしまうんですね。

だから改良点を多く挙げたクラスほど、講座の評価が高くなってしまったのでした。

このように人間は、「B」という事象を見ると、頭の中で勝手に「それはAだからだろう」という理由を結びつけてしまいます。「Bに対して、その原因のAを突き止めないと気がすまない」と言ってもよいでしょう。

その結果としてBを見ただけで、それはA→B、すなわち「BなのはAだからである」と無意識に解釈してしまうのです。

苦情を言える→苦情は少ないのだろうと変換する

一例として、マクドナルドのアンケートアプリ「KODO」が挙げられます。

わざわざアンケートアプリまで作ってお客様の声を集めようとするのはなぜでしょうか。

もちろん、お客様の声を集めたい、が最大の理由でしょう。マクドナルドは一時期、チキンナゲットなどの問題があり、原材料への疑念が高まりました。そこでお客様の声を積極的に聞こうとしたことは事実です。

ただし狙いはそれだけではないでしょう。このようなアプリがあることで、

「マクドナルドは積極的にお客様の声を聞こうとしている企業だ」

「ということはマクドナルドはお客様に不満を言わせない自信があり、品質やサービスが良いに違いない」

とお客様の頭の中で評価を「変換」してもらう狙いがあると思われます。

「私たちはこのように積極的にお客様の声を集めていますよ。それはつまり、それだけ自信があるからです」

と解釈してもらう意図があるのではないのでしょうか。

このような狙いの最もわかりやすい例が「返品保証」です。「ご満足いただけない場合、返品されたら全額お返しします!」のアレです。

こちらも「そんなことしたら返品が殺到して大損になるんじゃない?大丈夫?」と思ってしまいますよね。しかしこちらも同じく、「それだけ自信があるんだ」という安心感につながります。しかも、実際にはそのように言っても返品率はせいぜい1-3%で、返品保証の効果によるプラス面が実際の返品のマイナスを上回ります。

お客様の「変換」を先回りする

人間は勝手に理由を推測して「変換」するクセがあります。これを利用すると、たとえば…

ラーメン屋さんが「当店はコショウを置いていません」
→「それだけスープにこだわって完璧に仕上げているんだ」

初心者の方にはお売りできません
→「プロでないと使いこなせないほど高品質なんだ」

山奥の交通の便が悪い場所にポツンとあるレストラン
→「それだけ味でお客を呼べると自信があるんだ」

お客様のために!親切に!と思うと、かえって「じゃあ別にこの店/企業じゃなくてもいいかな」と思われてしまいます。

かえって「訳あり」な方が、お客様を「なんでだろう?」「こうじゃないかな?」と高い価値を感じてもらえる場合があるのです。

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