Q.コロナ禍で売上が減少し、既存の事業が厳しくなりました。新規事業や新商品開発で現状を打破したいと思います。アドバイスをお願いします。
A.「今ある商品を別の顧客に売る」ことをまず考えてみてはいかがでしょうか。
2020年、新型コロナウィルスにまったく影響を受けていない企業や個人はおそらく皆無ではないでしょうか。
それくらい新型コロナウィルスは私たちの生活を一変させました。
特に売上が減少して苦境に立たされている企業や事業主も多いかと思われます。
「このままじゃダメだ。よし、新規事業に乗り出すぞ!!」
その気持ちもわかります。
しかし、待ってください。
新規事業や新商品開発の前に、まずは
「今ある商品やサービスを、違う顧客に売る」
ことを考えてみませんか。
1)私は「飛び込み営業」してほしかった
私は会社員時代、デパートだけに出店しているいわゆる「ラグジュアリーブランド」に勤務していました。
そういったラグジュアリーブランドは謎が多くベールに包まれている、という印象ではないでしょうか。
とはいえ、会社としてはごく普通ですし、勤務しているのもごく普通の会社員です。
貴族やお金持ちが余興でやっているわけではありません笑。
むしろビジネス規模としては、ドラッグストアで扱われている大手の企業・ブランドに比べると、ごく小規模です。
そのため内部では常に経費の削減に追われていました。
(それでいて「経費が少ないように見えないようにする」ことが常に求められます。ラグジュアリーブランドですから。)
ですから、お取引のある企業も、無名かつ小規模の企業が多かったものです。
印刷会社さん、ノベルティ会社さんなど、決して当社は発注規模が多くはなかったので、お付き合いする会社も社員数人~程度の小規模な企業がほとんどでした。
大規模な広告代理店に丸投げ、あとはおまかせ…とできれば楽なのですが、そうはいきません。
そこで私は、生意気な表現になるかもしれませんが、
「飛び込み営業、もっと来ればいいのに」
と思っていました。
普通、飛び込み営業って嫌われますよね。
する側としてもなるべくならしたくない、という方が多いのではないでしょうか。
しかし私(たち)としては、印刷にしてもノベルティにしても「良い取引会社さんがあったら、どんどん歓迎」「むしろどんどん売り込んできてほしい」と思っていました。(もちろん度を越した営業行為は迷惑ですが。)
自分たちでよい新規の取引会社を探すのは大変ですからね。
とはいえ、飛び込みにせよ、事前アポにせよ、「ウチは○○の会社なんですが、お取引しませんか!」と声をかけてくる企業はごくわずかでした。
もしかしたら
「ラグジュアリーブランドは取引先が決まっている、ウチなんかが入り込める余地はない」
「ラグジュアリーブランドだからものすごく超高品質を要求してウチでは無理かもしれない」
と思っていたのかもしれません。
しかし前述の通り、ラグジュアリーブランドといえども普通の企業の一部門です。
「より安く、より高品質のお取引会社さんがあればどんどん採用したい」と思っていました。
2)自分の客は○○…の思い込みが無いか
もしかしたらあなたの会社・商品も同じように
「実は求めているのに、ウチに売ってこないから知らない/買いようがない」
潜在的な取引先があるかもしれません。
簡単に言えば「今ある商品を異なる取引先に売る」余地があるのです。
ウチの商品を求めるのは○○業界だけ…■■企業が取引なんてしてくれるはずがない…
それはあなたの思い込みかもしれません。
繰り返しますが、世界的ラグジュアリーブランドも社員数人の印刷会社と取引をしていたのですから。
私にも思い当たるふしがあります。
私は「中小企業診断士」ですし、地方都市(広島市)在住ですので、お取引をする顧客も中小企業を設定していました。
大企業は取引先が固定しているし、取引相手も大手ばかりで私のような個人と取引するはずがない、と思い込んでいたのです。
しかし実際には大企業とお取引をする機会が少なからずありました。
確かに考えてみると、大企業といえども予算の縛りはありますし、日常から様々な取引業者とやり取りをして少しでもよい条件を探しているわけです。ましてや今はリモートでやり取りが可能です。
私は「もっと飛び込み営業とか来ればいいのに」と思っていたにも関わらず、自分が売る側になると「大企業は対象外」と決めつけてしまっていたのです。
3.既存商品を大事にしよう
ビジネスの展開としては、「既存商品と新商品」「既存顧客と新規顧客」2通りずつの組み合わせ、計4通りがあります。
このとき、ビジネスがピンチに陥ると冒頭のように「新商品」を作り、それを売ろうとします。
しかし新商品はリスクが大きく、経験のない分野なので失敗する確率も高くなります。
そこでおすすめが「既存商品」を「新規顧客」に売ることです。
私のラグジュアリーブランド時代の「買う側」の経験からも、コンサルタント・研修講師としての「売る側」の経験からも、「この商品を買う人って実はこうだったんだ!思っていたのと違った!」と発見することは多々あります。
新商品や新規事業で一発当てたい!と考えるよりも、まずは
「この既存の商品を買ってくれそうなお客様はどこか別のところにいないだろうか」
と考えてみてはいかがでしょうか。
代表・幸本陽平 プロフィール
- 化粧品デパートのマーケティング業務に携わり、その後独立。
研修や執筆、マーケティングをわかりやすく伝えるための活動などに取り組む。
(株)東風社代表取締役 中小企業診断士 一橋大学卒
広島市在住、新潟県長岡市出身
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