ファシリテーションとは
ファシリテーション(facilitation)とは、人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶよう舵取りすること。 集団による問題解決、アイデア創造、教育、学習等、あらゆる知識創造活動を支援し促進していく働きを意味します。 その役割を担う人がファシリテーター(facilitator)であり、会議で言えば進行役にあたります。(日本ファシリテーション協会より)
ファシリテーションという言葉はかなり浸透してきました。
簡単にいえば「会議などをうまく進行すること」で、学ぶための書籍や講座なども多数存在します。
しかし、浸透してきたがゆえに、安易にファシリテーションを行って失敗してしまうこともしばしば。書籍や講座で「なんとなくできそう」と思ってしまい、安易に実践することで「生兵法は大怪我のもと」になり、会議などがかえってぎくしゃくしてしまうことも。
そこで、本格的なファシリテーションを学んだり挑戦したりする前に、ファシリテーションの場面の冒頭、開始時に「やるべき4つのこと」と「やってはいけない1つのこと」をご紹介します。
私、幸本陽平は研修講師として研修を行ったり、企業のコンサルタントとして会議を行う上で、必ず最初に行う4つのことがあります。それによって、研修や会議が円滑に行われます。
この4つをやっておき、さらに「やりがちだがやってはいけない1つのこと」を回避すれば、よいファシリテーターとなり、円滑な会議となることでしょう。
冒頭でやってはいけないこと
アイスブレイク
会議や話し合いの冒頭でやってはいけないこと、それはアイスブレイクです。
アイスブレイクとは:
氷を解かすことの意味。初対面の人同士が出会う時、その緊張をときほぐすための手法。集まった人を和ませ、コミュニケーションをとりやすい雰囲気を作り、そこに集まった目的の達成に積極的に関わってもらえるよう働きかける技術を指す。 アイスブレイクは自己紹介をしたり、簡単なゲームをしたりすることが多く、いくつかのワークやゲームの活動時間全体を指すこともある。(中略)「アイスブレイク」という用語は、参加者の不安や緊張を氷にたとえ、その「硬い氷をこわす、溶かす」という意味を持っている。(Wikipediaより)
いきなり本題に入るのではなく、まずは参加者同士で打ち解ける。
それがアイスブレイクの目的です。
「どうしてやっちゃいけないの、それって大事なんじゃないの」
「いきなり始めるよりもアイスブレイクで関係性を構築してからの方が有効では」
「実際、アイスブレイクしたことあるよ」
このように思ったかもしれません。
特に、会議の進行やファシリテーションを学んだことがある人こそ、アイスブレイクの重要性を嫌というほど目にしたことがあるはずです。
しかし私は「アイスブレイク、下手にするならしない方がマシ」とすら思っています。
念のため補足すると、私はすべてのアイスブレイクを否定するわけではありません。
アイスブレイクが有効な場面、状況は確かに存在します。
しかし、「アイスブレイクすべきかどうか」「どのような内容のアイスブレイクがふさわしいか」を考えず、本などでかじった程度のアイスブレイクをとりあえずやるのなら、それはやめたほうがよいでしょう。
アイスブレイクは「必ずした方がよいもの」ではありません。
なんとなく、でするくらいなら、しない方がマシです。
具体例
アイスブレイクをしない方がマシ、と考える理由は以下です。
1)アイスブレイク自体に警戒してしまう
2)少しでも司会にミスや不安があると参加者はそれを引きずる
3)恥をかかされたと感じる
1)アイスブレイク自体に警戒してしまう
最近はアイスブレイクが普及したので、アイスブレイクをやろうとするファシリテーターも増えています。
すると受講者もアイスブレイクに慣れ、
「ああ、またなんかやらされるな」と身構えてしまいます。
「どんなことやるんだろう、面白そう」よりも「なんかさせようとしている、イヤだな」が勝ってしまうのです。
自然な形に自然にアイスブレイクに誘導するのは、場数を踏んだベテランのファシリテーターでも至難の業です。
実際、私も受講者の性別、年齢、雰囲気などで冒頭の内容を変更することもよくあります。
そんな「ふさわしくない雰囲気」で何かしようとしても、
「いや私は話し合いをしに来ているんだけど?なんでそんなことしなくちゃいけないの?」
と、かえって心のバリアを張ってしまいます。
もちろん内容などにもよりますが、話し合いの参加者は基本的に話し合いをするつもりで来ています。
そこでいきなり「さあ、仲良くなるためにゲームをしましょう!」と言い出しても、
「私たちはいい大人なんですけど。早く話し合いをしましょうよ」
となってしまうのがオチです。
それなら、中途半端なアイスブレイクなどはせず、淡々と本題に入ったほうがマシです。
2)少しでも司会にミスや不安があると参加者はそれを引きずる
私がある話し合いに参加したときのこと。
ファシリテーターは以前にお知らせした「冒頭にすべき4つのこと」を何もせず、いきなりアイスブレイクをしようとしました。
私はそれに素直に従ったものの、ファシリテーターによるアイスブレイクのやり方や目的の説明が十分ではありませんでした。
そのため、アイスブレイクを始めたはいいものの、途中でグダグダになったり、ルールがよくわからなくて詰まったり、かえって混乱してしまいました。
そのとき、私は率直にこう思いました。
「このファシリテーター、大丈夫?」
いったんこうなってしまうと、話し合いが始まっても
「この人にファシリテーションを任せて大丈夫かな…」
の気持ちがぬぐえません。
坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、ではないですが、ちょっとした落ち度でも大きいミスのように見えてしまいます。
一旦こうなってしまうと、信頼を取り戻すのは大変です。
こんな風になるくらいなら、アイスブレイクをせず、淡々と開始したほうがまだマシでした。
アイスブレイクは、ただでさえ受講者が緊張・警戒しているときに、何かをやってもらう(やらされる)のですから、ミスが起きがちです。
そこでのほんのちょっとのミスで「このファシリテーター、大丈夫?」と不信感を持たれるのは、非常にもったいないことです。
だったら、アイスブレイクは無理にやらないほうがよいでしょう。
3)恥をかかされたと感じる
アイスブレイクは、種類によってはゲーム性をもたせたものもあります。
そこで要注意なのが、アイスブレイクを盛り上げようとして「成功/失敗」や「勝ち/負け」があるゲームを行うケースです。
成功を目指してチャレンジしたり、チーム対抗にして勝敗を競ったり、といったアイスブレイクの内容です。
そのようなアイスブレイクは、うまくやれば盛り上がります。
しかし、あまり参加したくない人にとっては
「やりたくない、でも自分が参加しないと負けたり失敗したりしてしまう、やらざるを得ない」
こんな状況になりがちです。
しかも、自分のせいで負けた、もしくは失敗した場合は、
「大勢の前で恥をかかされた」
「やりたくないのに苦手なことをやらされた」
とマイナスの感情になってしまうことがあります。
ファシリテーターにとっては単なるアイスブレイクのお遊びのゲームであり、打ち解けることが目的であって失敗したからってどうということはない、成功失敗や勝ち負けは問題じゃない、と思うかもしれません。
しかし、当人には「恥をかかされた、不愉快だった」の思い出だけが残ります。
そんな風になってしまうくらいなら、アイスブレイクは行わない方がマシです。
まとめ
繰り返しますが、私の主張は
「下手にアイスブレイクをするくらいなら、しない方がマシ」
であり、アイスブレイクのすべてが無意味だと言いたいわけではありません。
うまくやれば、アイスブレイクは非常に有効です。
しかしその「うまくやる」の難易度がとても高いのです。
安易に手を出すと、失敗してダメージを受けます。
だったら、いい大人なんだから安直にゲームなどをせず、淡々と本題の話し合いに入った方がマシ、というスタンスです。
安易な生兵法の「アイスブレイク」は気をつけましょう。
代表・幸本陽平 プロフィール
- 化粧品デパートのマーケティング業務に携わり、その後独立。
研修や執筆、マーケティングをわかりやすく伝えるための活動などに取り組む。
(株)東風社代表取締役 中小企業診断士 一橋大学卒
広島市在住、新潟県長岡市出身
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