先日、展示会に行ってきました。
(出展者ではなく、来場者としてです。)
展示会はある意味、究極の「伝える」場です。
わずか数秒で通り過ぎる人に「伝える」ことができなければ、スルーされてしまいます。
ですから、「伝える」ことの上手・下手が、展示ブースによって如実に現れます。
そこで「伝える」専門家である私が思ったのは…
下手すぎる!
が率直な感想です。
しかし、これだけだと単なる悪口になってしまいますので、具体的に改善のポイントを挙げます。
まず、何よりも多いのが、
「この製品/サービスが何か、何ができるかの説明が多い」
ということです。
「展示会なんだから、商品の紹介をするのは当たり前じゃないか!」
と思いましたか?
違うんです。
来場者は、最初からそのブースに詳しく話を聞きたくて来た、といった例外を除き、「それが何か」は興味ありません。
「それが私にとってどういいか」
が知りたいのです。
Web上での会議システム(のようなもの)を提供するA社と私の会話を再現します。
(注、実際のケースではなく、わかりやすく編集しています。カッコ内は私の心の声です)
A「こちら、弊社の会議システムなんですが…」
私「はぁ(興味ないけどとりあえず聞いてみようかな)」
A「従来の電話会議だと、~とか、~っていう欠点があったんですね。また、スカイプも、~しなければなりません。それに対して我が社のXシステムは、この部分をクリックするだけで…」
私「(長いなぁ…というか私は今の電話会議で特に困っていないんだけど。いつまで説明が続くんだろう)」
A「~~~なんですよ、いかがでしょうか(ようやく間が空く)」
私「…すみません、よくわかりませんでした。(一方的に使い方を説明されてもわからないよ…)」
A「は、はい、じゃあデモをご覧ください。こうやって、ここをクリックすると…」
私「(別にデモを見たいわけじゃないんだけど。)あの、これって普通の電話会議とどう違うんですか?これだったら別に電話やスカイプで会議するのと大して変わらないと思うんですけど」
A「はい、このXシステムは電話やスカイプに比べてこの点が簡単で…」
私「でも会議の相手もこのシステムを使わないといけないんですよね?だったら、電話しましょう、ファイルはメールかチャットで送りましょう、の方が簡単だと思うんですが」
A「このシステムは、このような画面で一元管理できまして…」
私とA社の会話は噛み合わないまま終わりました。
なぜ噛み合わなかったのでしょうか?
A社は、このシステムが何かを説明したい。
私は、このシステムが私にとってどういいか=どんなメリットや利益があるかを知りたい。
という視点の違いがあったのです。
もしもA社が紹介の際、第一声で
「新規の問い合わせが50%増えるシステムです」
「通信費が3割削減できるシステムです」
「問い合わせ対応業務に、新入社員でも3時間で即戦力になるシステムです」
といったように具体的なメリットを打ち出していたら、私は「それは本当?なぜそう言えるのか教えて」と興味を持っていたことでしょう。
※仮にそのメリットが私にとってピンとこなかったら、それは私は想定する顧客ではないということです。お互い深入りしない方が双方にとって有効に時間を使えてトクになります。
A社の方は「このシステムをしっかり説明すれば良さがわかってくれるはずだ!」と熱心に説明してくれました。
私にとって、このシステムが何か、は極論すればどうでもいいことです。それよりも何をもたらしてくれるのかを知りたいのです。
特に展示会は歩いている人に立ち止まってもらう必要があるので、いちいち「説明」している時間はありません。それよりも「問い合わせが5割増しになるよ!見てってよ!」の方が効果的です。
私の体感では、展示会で声をかけてきて「ほうほう」と能動的に興味を持ったのは1割以下です。残りの9割はスルー、もしくは「しょうがないから資料だけもらってあげるか」です。
スルーする9割の企業は、このように「説明」しようとするのはまだいいほうで、もっとひどいケースすらあります。
興味がない人に短時間で伝えたいのなら、説明してはいけません。「相手のメリット」を投げかけましょう。
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