【新規事業×高価格×地方023】広告費を増やさず売上が向上。秘密は「ひとり」

ターゲットやペルソナの設定をきちんと行った、でも結果が出ない。
そのような、いわば膠着状態に陥っている経営者やマーケティング担当者の方は多いのではないでしょうか。
私もかつて、緻密なデータ分析に基づいたプロジェクトのはず、でもうまくいかない、という手痛い失敗を経験しました。
当時は「正しい数字によって正しい答えにたどり着く」と信じて疑わなかったのです。
精緻なデータの裏には
ある消費財のプロジェクトを担当していたときのことです。
年代構成、世帯年収、利用頻度、価格感度…といったデータを収集し、数字を並べ、論理的に筋が通ったターゲット像を組み立てました。
社内プレゼンでも高い評価を得て、私自身も「これならいける」と思っていました。
ところが、いざ発売してみると売れ行きが芳しくありません。
競合の動向や市場環境のせいにしたくなりましたが、本当の問題はもっと別のところにありました。
私は、実在しない「平均の組合せ」に対して商品を作っていたのです。
「広げる」判断の罠
データ上では「30代共働き・都市在住・価格感度やや高め」という層は確かに多数派として存在します。
しかし、現実的には、そのような条件をぴったり満たす「平均的な人間」なんてどこにもいません。
平均をもとに設計した商品は、角が取れているため、誰にも嫌われません。
その代わり、誰かにとっての「どうしてもこれがいい」となる強い要因も持っていません。
だから、売れません。
売れない焦りから、私はさらなる悪手を打ちました。
ターゲットを広げ、広告のメッセージをより抽象的で、誰にでも当てはまりそうな表現に変えたのです。
間口をより広くすれば誰かが引っかかるだろう、という安易な期待がありました。
結果は出ませんでした。
反応は改善するどころか、さらに薄くなったのです。
商品の存在感がぼやけ、誰の課題を解決するものなのか、誰にも伝わらなくなってしまいました。
転機は「ひとり」の声
一人の既存顧客への深いインタビューが、行き詰まった状況を変えることになりました。
データの数字を追いかけるのではなく、ひとりのお客様に時間をかけて向き合ったのです。
- なぜうちを選んだのか?
- 何と迷っていたのか?
- 最後の決め手は何だったのか?
そこで返ってきたのは、機能の優位性でもコスパでもなく、極めて個人的かつ予想もしなかった意外な理由でした。
その後、訴求内容をその一点に絞ることにしました。
伝える要素を増やすのではなく、むしろ減らしたのです。
「これは、○○なあなたのための商品です」とはっきり言いきる形に変えました。
その後、売上は改善し、リピート率も向上しました。
市場を広げたからではなく、顧客を見る解像度を上げただけで、売上が伸びたのです。
経営には平均が必要、しかし売上は一人が作る
もちろん、経営判断において市場規模や認知率といったデータは不可欠です。
それらは地図のようなもので、今いる位置を教えてくれます。
しかし、「ではここからどこに向かえばいいか」は教えてくれません。
実際に財布を開いて購入を決めるのは、セグメンテーション分析されたデータではなく、血の通ったひとりの生活者です。
その人がどんな場面で悩み、どの言葉に心を動かされたのか。
その決断のプロセスを理解する必要があります。
もしそうでないと、それらしい戦略を立てても、ただの机上の空論で終わります。
立ち止まって「ひとり」を見つめ直す
もしも今、ターゲットを「広め」に設定しているのなら、一度立ち止まってみることをお勧めします。
新しい市場調査を企画する前に、すでにあなたの商品を選んでくれている顧客の話を聞いてみてください。
なぜ彼ら・彼女らは、数ある選択肢の中から「それ」を選んだのでしょうか。
市場を広くとらえることも確かに大切です。
しかし、売上を動かす本質的な起点は、常に「具体的なひとり」にあります。
「ひとり」の声に耳を傾けましょう。


